第8回国際地学オリンピックスペイン大会(8th International Earth Science Olympiad, Santander in Spain、以下スペイン大会と省略)で、以下の通り、日本選手3名が金メダルを、1名が銅メダルをそれぞれ受賞した。金メダルを複数名が授与されたのは今回が初めてで、ゲスト生徒も銀メダル相当の成績を収めた(写真1)。ゲスト生徒はメダル授与の対象外というほかは、他の選手同様に大会に参加できる。2016年の第10回国際地学オリンピック日本大会を三重県内の高校生に広報してもらう目的で、今回初めてゲスト生徒1名を派遣した。
金メダル: | 宇野 慎介(灘高等学校3年) 西山 学 (巣鴨高等学校3年) 野村 建斗(筑波大学附属駒場高等学校3年) |
銅メダル: | 杉 昌樹 (灘高等学校3年) |
銀メダル相当: | 芝田 力 (高田高等学校2年、ゲスト生徒) |
スペイン大会は2014年9月22日〜28日にスペイン北部カンタブリアのサンタンデールで開催された(写真2)。主会場はマグダレナ半島にあるカンタブリア大学の施設。今大会には21ヶ国・地域から82名の高校生が参加した。おもな日程は以下の通りで、( )内は引率者‐メンター・オブザーバー‐の日程。
1日目 | 登録 |
2日目 | 開会式・Sand sculpture・ 大学生スタッフによるフラメンコ講習会 (第1回運営会議・試験問題の検討と翻訳) |
3日目 | 見学(第2回運営会議・試験問題の検討と翻訳) |
4日目 | 国際協力野外調査・筆記試験 (試験問題の翻訳・第3回運営会議) |
5日目 | 筆記試験・実技試験(見学) |
6日目 | 国際協力野外調査発表会・伝統舞踊鑑賞 (得点検討会・第4回運営会議・日本大会PR) |
7日目 | 表彰式 |
試験はこれまでの3部門(地質・固体地球科学部門、気象・海洋科学部門、天文・地球惑星科学部門)による筆記・実技試験ではなく、試験ごとにテーマが設定された分野横断型の5つの試験(筆記試験4、実技試験1)が実施された。
メダルを競う試験とあわせて、国際地学オリンピックの特色ともいえるのが国際協力野外調査(International Team Field Investigation、以下ITFIと省略)である。これは、地球科学分野でもよく行われる共同研究を疑似体験するような活動で、表彰も行われる。今回は一班約10名の国際混合チームが8グループ編成された。大会4日目午前中にはマグダレナ半島対岸の海浜で穴を掘り、剥ぎ取り標本の作成が(写真3)、大会6日目午後には「Sedimentology through Lacquer Peels in Somo Beach」と題し、スライドや実演を交えながら調査結果の発表がそれぞれ行われた(写真4)。日本選手は英語でのやり取りに戸惑いながらも、仲間と協力し合い、以下の賞を受賞した。
ITFI Best Presentation賞 | :Group5(西山選手所属チーム) |
ITFI Best Scientific Research賞 | :Group8(野村選手所属チーム) |
ITFI Enthusiasm特別賞 | :Group2(芝田ゲスト生徒所属チーム) |
このほか、見学日には地元の高校やアルタミラ博物館などを訪れ、夜には伝統舞踊鑑賞・講習が催されるなど、北スペインの魅力にも触れることができた大会であった(スペイン大会の詳細な報告や写真は、地学オリンピック日本委員会のホームページ http://jeso.jp/ にて)。
大会期間中にはメンターとオブザーバーが参加する運営委員会(Jury Meeting)が4回開かれた。第1・2回は試験・イベント運営方針の確認と試験問題の検討、第3回は今大会以降の国際地学オリンピックの活動方針を議論した。大会6日目の第4回運営委員会では、表彰に関する確認の後、第10回国際地学オリンピック日本大会(三重)をメンターとオブザーバーらでPRした。
今大会はアメリカが大会を変更したため、急遽、スペインでの開催となった。試験が地質分野に偏ってしまったことは難点だが、開会式でスペインのGeodiversity紹介映像が流れ、「The Magdalena Gymkhana」と題した地質調査の雰囲気を感じられる実技試験、閉会式でのGeopark関係者のあいさつ、スペイン産アラゴナイトの記念品が参加者全員に贈呈されるなど、地元地質関係者の多大なる協力・支援のおかげと感じた。最後に、円滑に大会を運営してくれた大会実行委員会の尽力に心より感謝申し上げる。
(地学オリンピック支援委員会:渡来めぐみ)
写真1 表彰式直後の日本選手 | 写真2 参加者全員での記念撮影 |
写真3 剥ぎ取り標本作成中のグループ2 | 写真4 ITFI発表会(マイクに向かう日本選手) |
(写真提供: NPO法人地学オリンピック日本委員会) |