「糸魚川ジオパーク ヒスイ探訪ジオツアー」
案内者:宮島 宏(フォッサマグナミュージアム)
参加者:青木秀則、吾妻惠豊、稲田多恵子、今田耕二、岩崎正夫、岩崎ハルエ、岡田浩二、岡本真琴、岡本真生、小幡喜一、小尾 靖、金 光男、小泉治彦、田中則雄、中井 均、細谷正夫、松田義章、矢島道子、吉岡秋子、渡邊喜美子、渡辺麻友(以上21名)
写真1 明星山の岸壁前の展望台で記念写真 |
写真2 青海川のヒスイ峡にてヒスイの原石を観察 |
今年の教師向け巡検は、2009年に世界ジオパークに登録された新潟県糸魚川で実施された。参加者は会員およびそのご子息など、総勢21名。フォッサマグナミュージアムの宮島宏氏が案内を担当され、「ヒスイ探訪ジオツアー」というテーマの下、ヒスイと歴史の里、糸魚川を満喫することができた。
当日朝、糸魚川駅に集まった参加者を、ヒスイの巨大な勾玉が出迎えてくれた。まずはバスに乗り込んで、フォッサマグナミュージアムへ。視聴覚ルームで宮島氏のユーモアあふれる柔らかな語り口で、ジオパーク糸魚川と日本最古の宝石であるヒスイ(翡翠)のお話を伺った。東日本と西日本を分けるフォッサマグナに位置する糸魚川市。電流の周波数やお雑煮に入れる餅の形をはじめ、言葉遣いなどいろいろな面で東日本と西日本の境目である糸魚川は、現在、ヒスイとジオパークで町おこしが進んでいる。ジオかつ、ひすいラーメンなどが“開発”されているらしい。また、翡翠はカワセミの意もあるという。「翡」はそのオス、「翠」はメスを指すのだそうだ。
お話の後、館内の展示を自由見学した。古生物分野の展示も充実しているが、やはり圧巻はヒスイの展示である。深い緑色の宝石質のヒスイをはじめ、紫や赤のヒスイなど、様々なヒスイを鑑賞することができた。また、特別に宝石級のヒスイ原石を手に持たせてもらった。さらに、館内には案内者である宮島氏が新鉱物として発見された「糸魚川石」や「蓮華石」などの標本、地質学者ナウマン関連の展示もあり、見学時間はあっという間に過ぎた。
すぐ近くに併設された長者ヶ原考古館に立ち寄った後、一行はバスで石灰岩の岩山である明星山を目指した。ここの石灰岩は石炭紀からペルム紀のもので、下を流れる小滝川から高さ440mもの壮大な岸壁を形作っている。ヒスイでできた岩塊が転がっているという渓流を眼下に眺め(写真1)、一行は昼食に向かった。
午後は、青海自然史博物館を見学。博物館前の広場に据えられている大きなヒスイの原石を前に、宮島氏がヒスイにまつわる新鉱物発見の経緯などを説明した。ご自身が発見したとははっきりおっしゃらない中にも、ちょっとした不注意から新鉱物発見のチャンスを逃した逸話なども盛り込みながら、実感のこもったお話をうかがうことができた。
再びバスに乗り、一行は今回の目玉である青海川のヒスイ峡へと向かった。転がり落ちそうな急坂を下っていくと、急流に洗われる一群の巨岩が目に飛び込んできた。しかも、数トンはありそうな巨岩そのものがヒスイの原石なのだ。その上に立つと感慨もひとしお(写真2)。さらに、周辺には微褶曲が美しい広域変成岩や蛇紋岩など、変化に富んだ岩塊が散らばっている。数億年前にプレートの沈み込み帯深部で起きた地質現象を肌で感じることができた。
今回の巡検では、ヒスイを中心とする鉱物はもちろん、ジオパークとしての糸魚川のバリエーションに富んだ地質と歴史を十分に堪能することができた。ガイドをしてくださった宮島氏に、心から御礼申し上げたい。
(千葉県立我孫子高等学校教諭 小泉治彦)