2011水戸大会:見学旅行

 

見学旅行:各コースの魅力と見どころ

 

本年9月に行われる水戸大会では,関東支部を中心に多くの会員の協力を得て,10コースの見学旅行を企画し現在その準備を進めております.水戸大会では,見学旅行は茨城を中心とした関東周辺地域の地質理解のための重要な行事と位置付け,参加者に満足していただける特徴的なコース作りを目指しております.正式なコース一覧や参加申込の詳細はニュース誌4月号(4月末頃)で紹介する予定ですが,それまでに会員の皆様に各コースの魅力や見どころを詳しく紹介していきたいと思います.

(問い合わせ先:見学旅行準備委員会 安藤まで ando@mx.ibaraki.ac.jp

(見学旅行準備委員会 委員長 安藤寿男,副委員長 山本高司)

 

A班:日立古生層 B班:筑波山 C班:磐梯・吾妻・安達太良
D班:常陸堆積盆 E班:棚倉断層 F班:栃木新第三系
G班:下総層群 H班:第四紀テフラ I班:関東のテクトニクス
J班:地学教育    


 

A班:日本最古の地層-日立のカンブリア系変成古生層 (9/12-13)

案内者:田切美智雄(元茨城大理),廣井美邦(千葉大理),足立達朗(九州大)

魅力

日本最古の地層である阿武隈山地南部日立地域のカンブリア系とカンブリア紀花崗岩類を見学します.また,カンブリア紀花崗岩を不整合で覆う石炭系礫岩やカンブリア系を原岩とする西堂平変成岩類を見学します.

見どころ

1.カンブリア紀花崗岩類
2.カンブリア系を原岩とする変成岩類
3.カンブリア紀花崗岩を不整合で覆う石炭系礫岩
4.カンブリア系を原岩とする西堂平変成岩類の堆積構造
5.石炭系を原岩とする変成岩と化石
6.カンブリア系の化石様組織

東連津川の不整合露頭:カンブリア紀花崗岩を不整合で覆う石炭系礫岩 西堂平層の層状堆積構造

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B班:筑波山周辺の深成岩・変成岩(9/12日帰り)

案内者:高橋裕平(産総研)・宮崎一博(産総研)・西岡芳晴(産総研)

魅力

筑波山は900mに満たない山ですが,その風格から深田久弥の日本百名山の一つとなっています.筑波山及びその周辺地域の山塊には古第三紀初頭の深成岩類と変成岩類が分布しています.その岩石学性質から西南日本内帯領家帯及び山陽帯の深成岩類・変成岩類の延長と考えられています.変成岩類は典型的な高温低圧型の変成作用を示しています.花崗岩類は石材として国会議事堂をはじめ日本の多くの建物で利用されています.

見どころ

1.稲田花崗岩の採石場見学
2.吾国山変成岩類
3.稲田花崗岩と筑波花崗岩との貫入関係
4.筑波山頂の斑れい岩(ハンマーの使用,岩石採取はできません)
5.筑波変成岩類
6.筑波花崗岩

稲田花崗岩採石場 筑波山山頂付近:女体山側から望む男体山

 

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C班:磐梯・吾妻・安達太良−活火山ランクBの三火山(9/12-13)

案内者:藤縄明彦(茨城大)・長谷川 健(茨城大)・伊藤太久(中央開発)

魅力

福島県の中北部に近接して存在する磐梯・吾妻・安達太良の三火山は,いずれも活火山ランクBに属していますが,潜在的噴火災害リスクは決して小さくありません.三火山は,それぞれ1888年,1893年,1900年に,犠牲者を伴う噴火を起こしています.現在の美しい湖沼や岩峰の景観を作った磐梯火山の1888年噴火は,わが国で最新最大級の岩なだれ災害を引き起こし,500名近くの命を奪いました.防災面でも注目すべきこれら三火山の,特徴的な地形および噴出物を,歴史時代から数十万年前にまで遡ったロングレンジな視点で観察します.

見どころ

1.磐梯火山1888年噴火に伴う地形変化と堆積物
2.磐梯山噴火記念館(展望塔から三火山も一望)
3.吾妻小富士と浄土平(1893年噴火の爪痕など)
4.安達太良火山20万年前の大規模溶岩流
5.安達太良火山12万年前の爆発的噴火堆積物
6.安達太良火山最新期(歴史時代を含む)の水蒸気爆発堆積物

磐梯銅沼付近から望む1888年の火口壁 安達太良沼ノ平火口

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D班:常磐地域の白亜系〜新第三系と前弧盆堆積作用(9/12-13)

案内者:安藤寿男(茨城大理)・柳沢幸夫(産総研)・小松原純子(産総研)

魅力

東北日本太平洋岸の常磐地域は白亜紀後期〜新第三紀の前弧堆積盆西縁の河川〜浅海〜陸棚〜大陸斜面相が比較的単純な構造で累重する日本でも稀な地域です.古第三紀の石炭は常磐炭田として1970年代まで採鉱されていました.精細な微化石層序に基づいて,前弧における様々な堆積作用や古生物相・古環境変遷が復元されており,北西太平洋の新第三系層序の模式的な地域の一つです.

見どころ

1.白亜系双葉層群の堆積相と巨大アンモナイト密集層
2.古第三系白水層群石城層の石炭層と扇状地成未固結礫層
3.新第三系の各層群の層序関係と多賀層群の大規模海底チャネル群
4.日本最大規模の五浦海岸の炭酸塩コンクリーションと化学合成群集
5.茨城大学五浦美術文化研究所六角堂と茨城県北ジオパーク構想

古第三系白水層群石城層の扇状地成未固結礫層の巨大露頭 北茨城市五浦海岸の炭酸塩コンクリーション岩礁と六角堂(右端)

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E班:棚倉断層のテクトニクスと火山活動・堆積作用(9/12-13)

案内者:天野一男(茨城大理),松原典孝(兵庫県大),及川敦美(オリエンタルコンサルタンツ),滝本春南(茨城大理),細井 淳(茨城大理)

魅力

棚倉断層は現在の日本列島形成に大きく関わった大横ずれ断層です.断層沿いに多くのストライクスリップ堆積盆が発達していますが,断層の活動と海水準変動によりその堆積環境は,湖沼→河川→浅海→深海へと変化しています.また,日本海の拡大と関連して活動した水中火山も存在しています.日本列島の新生代テクトニクスを考える上での要の地域の一つです.

見どころ

1.棚倉断層と断層地形
2.断層活動と関連した土石流堆積物
3.横ずれ堆積盆を埋積したファンデルタ堆積物
4.男体山水中火山とそれを覆うタービダイト
5.堆積盆発生初期の湖沼堆積物と陸成火砕流堆積物

棚倉西縁断層に沿って発達する断層地形 中新世ハイアロクラスタイトからなる袋田の滝

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F班:栃木の新第三系−荒川層群中部の層序と化石および大谷地域の応用地質(9/12日帰り)

案内者:松居誠一郎(宇都宮大教育),山本高司(川崎地質),柏村勇二,布川嘉英,青島睦治(栃木県博)

魅力

中部中新統の荒川層群は微化石だけでなく,貝類を主とする大型化石をほぼすべての層準から産します.中位にある大金層では所謂「耶麻動物群」と「塩原動物群」の中間的な性格の貝類化石が密集層を形成します.ここではこの化石の産状と,密接した層準にある水中火砕流堆積物を観察します.大谷石は帝国ホテルなどに石材として利用され,近年は加工技術の工夫で様々な使われ方をしています.一方で旧採掘場の陥没などの地盤災害が問題になっています。今回は一般公開していない陥没モニタリングシステムを見学し,ボーリングコアから大谷石の連続層序を確認することができます.さらに,最新の空洞探査機器(レーダー・空洞カメラ・ミュー粒子)をお見せします.

見どころ

1.那須烏山地域の大金層中部の層序と化石の産状
2.大金層中部の火山灰層による対比と水中火砕流堆積物
3.大谷石採石場跡地と陥没モニタリングシステム見学
4.大谷石構造ボーリングコア観察と地下空洞探査機器のデモンストレーション

大金層中部層準の荒川沿い露頭 大谷石採掘跡を利用した大谷資料館

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G班:常陸台地の第四系下総層群の層序と堆積システムの時空変化(9/12日帰り)

案内者:大井信三(国土地理院),横山芳春(アースアプレイザル)

魅力

茨城県中部・南部の常陸台地には第四系更新統下総層群が広く分布しています.今まで研究者間で意見の相違が多かった常陸台地の下総層群の層序について,テフラに基づく新たな層序対比を紹介します.そして堆積相解析・シーケンス層序解析・テフラ層序を総合した常陸台地の堆積システムの時空変化を復元します.

見どころ

1.常陸台地更新統下総層群の指標テフラによる層序対比
2.藪層から常総層の堆積シーケンスの累重関係と堆積システムの時空間変化
3.常陸台地の南北で異なる見和層の堆積相と堆積シーケンス
4.大規模露頭の未固結砂層に発達する浅海〜内湾〜河川堆積相と堆積構造
5.「見和層中部層」の河成礫層に挟まれる海成層と真岡テフラの層位
6.房総の清川層と常陸台地の笠神層との対比-真岡テフラとKy4テフラによるMIS7.3層準の位置付け
7.見和層基底の北関東・箱根系テフラの層位関係
 

左:涸沼川中流の上泉層開析谷充填層中の大古山軽石(OgP:上)と阿多鳥浜テフラ(Ata-Th:下) 右:鹿島台地において見られる藪層から木下層までの各層準

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H班:鬼怒川低地帯の第四紀テフラ層序−火山噴火史と平野の形成史(9/12-13)

案内者:鈴木毅彦(首都大学東京)

魅力

関東北部から上信越にかけては,日本列島の中でもとくに多くの第四紀火山が密に分布する地域です.これら多くの第四紀火山は爆発的噴火を繰り返してきたため,鬼怒川低地帯には多数のテフラが堆積しており,噴火史の構築に適した地域となっています.一方,同低地帯には火山活動,地殻変動,さらに気候変化・海面変化等の古環境変化の影響を受けて形成された段丘,丘陵,第四紀層が顕著に発達します.そしてそれらの編年にテフラは大きな役割をはたします.

見どころ

1.赤城火山,日光火山群,那須火山起源の降下テフラと火山噴火史
2.鬼怒川低地帯の河成段丘と日光火山群の影響
3.中期更新世の扇状地に起源をもつ喜連川丘陵とカルデラ噴火によりもたらされた塩原大田原火砕流堆積物
4.扇状地からなる那須野原の地形
5.前期更新世に噴出した白河火砕流堆積物群と白河丘陵

左:北関東を広く覆う約44kaに噴出した赤城鹿沼テフラ(宇都宮市内) 右:前期更新世に噴出した西郷火砕流堆積物(白河火砕流堆積物群)

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I班: 伊豆衝突帯の最前線−関東のテクトニクス(9/12-13)

案内者:小田原啓(神奈川温地研),林広樹(島根大),井崎雄介(島根大・院),伊藤谷生(千葉大),染野誠((株)パスコ)

魅力

神奈川県西部から静岡県東部にかけての一帯は,伊豆弧衝突の最前線として,特に1970年代から80年代にかけて,島弧衝突帯のテクトニクスに関する様々な研究成果が報告されてきました.同時に,トラフ充填堆積物とされる足柄層群や,地層対比と堆積環境解析の強力な武器である第四紀テフラに関する研究も精力的に進められてきた地域です.本地域は近年,地下構造探査プロジェクト(首都直下プロジェクト,国府津−松田断層帯プロジェクト等)により再び注目を集めています.これらの最新の成果を踏まえて,ベテランから若手まで,参加者のみなさまが伊豆弧衝突帯のテクトニクスについて議論できる場を提供したいと考えております.

見どころ

1.神縄・国府津−松田断層系:松田山からの俯瞰,平山断層,駿河小山の神縄断層系(KS断層)
2.畑火道角礫岩(採石場)と火砕流堆積物(生土):爆裂火口跡とその火砕流堆積物
3.足柄層群(トラフ充填堆積物):塩沢層の礫岩,畑層のカキ礁
4.生命の星地球博物館,温泉地学研究所の施設見学(主に雨天時用として)/新しい箱根火山形成モデルに対応した投影型地質模型(温地研)/常時地震観測ネットワークの紹介(温地研)

左:塩沢の神縄断層.第四系足柄層群塩沢層の礫岩に中部中新統丹沢層群大山亜層群の火山砕屑岩が衝上する逆断層. 右:平山断層.下盤は足柄層群根石層と不整合で重なる旧河川礫層.逆断層の上盤は足柄層群瀬戸層.

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J班:地層を見る・はぎ取る・作る(9/10)

案内者:伊藤 孝(茨城大教育)・牧野泰彦(茨城大教育)・植木岳雪(産総研)・中野英之(京都教育大)・小尾 靖(神奈川県立相模原青陵高校)

魅力

現世の砂浜と第四紀の地層からどういう情報を読めるか,児童・生徒に伝えるか,というのがテーマの一つです.実際に現世の砂浜海岸・第四系を前に皆で議論したいと思います.一方では,諸事情により児童・生徒を野外へと連れ出すことが困難な状況です.そのため,写真や動画では伝えられない地層の質感を教室で表現できる手段として,地層のはぎ取りの作成法とその活用法を提案します.また,簡便な手法で教室において地層を再現する実験法も併せて提示します.

見どころ

1.大洗海岸の地形・堆積物の読み方
2.第四紀海浜堆積物の読み方
3.地層のはぎ取りの実践
4.地層のはぎ取りを活用した授業実践の提示
5.教室で地層を再現する簡易水路実験の実践

 

左:地層のはぎ取り作業の様子(水戸市下入野の第四系更新統) 右:簡易水路実験で作成した砂と泥の互層

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