セッション招待講演の紹介

世話人や専門部会から提案され,行事委員会が承認したセッション招待講演(予定)の概要を紹介します.学術的にも社会的にも注目されている研究者やテーマが目白押しです.会員の皆様,この機会をお見逃しなく! なお,講演時間は変更になる場合があります.

(行事委員会)

 招待講演が予定されているセッション(略称)

T2 太陽系と地球の進化史
T4 海溝での生物と巨大地震との関連性
T5 東北地方太平洋沖地震とその付随現象
 
R1 深成岩・火山岩
R3 噴火・火山発達史
R4 変成岩とテクトニクス
R6 ジオパーク
R8 海洋地質 R12 石油石炭 R14  沈み込み帯・陸上付加体
R20  応用地質・ノンテク
R23  地球史
R24 原子力と地質科学

 

T2 物質科学・比較惑星地質学から解読する太陽系と地球の進化史
■関根康人氏(東京大学) 30分
関根氏は,惑星化学と地球大気進化を大きな柱とした研究を行っており,タイタンや火星の進化過程から太古代の地球大気,小惑星衝突が大気に及ぼす影響など,その化学反応過程を室内実験,理論計算や野外調査によって調べている.最近では,インド・ロナクレーターの掘削を通じてアジア気候変動の研究も行っている.
■丸岡照幸氏(筑波大学) 30分
丸岡氏は,炭素・硫黄同位体比などの地球化学的手法を用いて,白亜紀/古第三紀境界の隕石衝突イベントが当時の地球環境や生命に与えた影響について研究を進めている研究者である.また同氏は,隕石衝突と大量絶滅に関するわかりやすい解説本も執筆しており,地球科学の普及にも貢献している.
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T4 海溝での生物と巨大地震との関連性
■野牧秀隆氏(海洋研究開発機構) 30分
野牧氏は日本海溝において震災前後を通じて生物学的な研究を多角的に行っている生物学者である.同氏はJAMSTECのYK11-E06をはじめとした東北地方の緊急航海にも参加している.それらの行動は記者発表もされており,社会的にインパクトのある研究成果が現在まとめられつつある.
■笠谷貴史会員(海洋研究開発機構) 30分
笠谷会員はJAMSTECのYK11-E06をはじめとした東北地方の緊急航海に参加し,広域サーベイにも携わり,数多くの生物学者と連携して東北沖の調査を精力的に行っている,現場を知り尽くした研究者である.また,同氏は海溝周辺でのAUVなどの機器を用いた調査にも従事している.
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T5 2011年東北地方太平洋沖地震とその付随現象に関する地質学的研究の進展
■池田安隆会員(東京大学) 30分
池田会員は,地質学的歪み速度と測地学的歪み速度の矛盾からプレート境界固着面全体がすべる巨大歪み解放イベントが存在することを,2011年の東北地方太平洋沖地震の発生以前から論じていた.
■西村卓也氏(京都大学) 30分
西村氏は,過去120年間の東北日本の地殻変動の時間変化を測地観測データから示し,2011年の地震以降進行中の余効変動が上記池田会員によって指摘されていた矛盾を解消する鍵になり得ることを指摘している.

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R1 深成岩・火山岩とマグマプロセス
■石原舜三会員(産業技術総合研究所) 30分
石原会員は深成岩,とくに花崗岩研究の第一人者であり,現在も国際的に使用される岩石化学的花崗岩区分法(マグネタイト系およびイルメナイト系)の提案者である.最近では,花崗岩の成因とレアアース・レアメタル含有量の関連性について精力的に分析・執筆を重ねている.
■小澤一仁会員(東京大学) 30分
小澤会員は地球深部におけるマグマの発生から進化までのプロセスを,天然物質の観察と室内実験に基づく物質科学的手法を用いて研究している.最近は,天然の岩石から鉱物間反応と変形の情報を抽出し,マントルの運動解析およびマントル物質の起源解明に取り組んでいる.
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R3 噴火・火山発達史と噴出物
■高橋正樹会員(日本大学) 30分
高橋会員は桜島火山や浅間火山の火山地質学・岩石学研究を継続的に行い,噴火の長期予測に有益な研究成果を多数残している.火山学に関する学術書・一般書の著書も多い.最近では,長期火山活動評価の視点から地層処分に関する提言を精力的に行っている.
■中田節也会員(東京大学) 30分
中田会員は雲仙火山科学掘削計画を主導・成功させ,活火山の火道の実態を世界ではじめて明らかにした.同時にマグマの脱ガスと噴火様式に関する火山学的新知見も明らかした.最近では,噴火活動中の霧島火山(新燃岳)における短〜中期活動予測(シナリオ作成)で注目される.
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R4 変成岩とテクトニクス
■伊藤喜宏会員(東北大学) 30分
深部低周波微動は沈み込み帯の深さ35 km,温度400 ℃程度で起こる特徴的な現象である.その痕跡は高圧変成帯に残されている可能性が非常に高いが,いまだに物質科学的な証拠に基づいたモデルは構築されていない.伊藤会員は深部低周波微動,ゆっくり地震の研究の第一人者である.地震学的にそれらがどのような現象で,地震学者はどういう実体と考えているかについて講演していただく.
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R6 ジオパーク
■柴田伊廣会員(室戸ジオパーク) 30分
室戸ジオパークは日本における世界ジオパークの一つであり,インタープリター・ガイドの質は極めて高い.学術的な事柄を市民にわかりやすく説明するのみならず,楽しませる技術をさまざま工夫している.柴田会員はこのガイドの育成に中心的に携わってきた.同会員の実践的な報告は,他のジオパークにおけるインタープリター育成において参考になるだろう.
 

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R8 海洋地質
■加藤泰浩会員(東京大学) 30分
加藤会員は,タヒチ沖やハワイ沖などの太平洋の海底にレアアースに富んだ遠洋性泥が存在することを発見し,組成・分布の調査を精力的に進めている.レアアース資源の賦存量や分布,さらにその成因解明に関する最先端の研究について講演していただく.
■鈴木勝彦氏(海洋研究開発機構) 30分
鈴木氏は,Re−Os年代測定法を用いた鉱床の形成年代の推定や熱水による変質の評価研究などを行ってきた.また,最近ではJAMSTEC・東京大学による資源泥の共同調査を計画・推進し,南鳥島周辺において超高濃度のレアアースが海底堆積物に含まれることを明らかにした.海洋調査の概要と最新の成果について講演していただく.
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R12 石油・石炭地質学と有機地球化学
■稲垣史生氏(海洋研究開発機構) 30分
海洋科学掘削の最深記録を更新したIODP下北八戸沖ライザー掘削は,石炭層と深部地下微生物圏の関係解明,地下生命圏の探索などで注目されている.掘削により未熟成な石炭層が確認され,その続成過程で供給された低分子有機化合物が深部での地下微生物圏を形成していることが推察された.同航海の共同主席研究者である稲垣氏に,ガスハイドレートの起源としても注目される微生物起源のメタン生成にまで踏み込んで講演していただく.
■横井 悟会員(石油資源開発) 30分
米国発のシェール革命により,天然ガスの需給構造や価格が大きく変化し,震災後のわが国のエネルギー構造の変化とも関連して国産エネルギー資源に対する期待が高まっている.秋田県に分布する女川層は優秀な石油根源岩であり,古くから石油地質学的な研究が行われてきた.横井会員は,根源岩と考えられてきた女川層に対してシェールオイル(タイトオイル)の可能性をいち早く指摘し,実証試験にまで導いた.
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R14  沈み込み帯・陸上付加体
■片山郁夫会員(広島大学) 講演時間未定
21世紀の固体地球科学分野における大きな発見の1つに,沈み込み帯におけるスロー地震群の発見がある.片山会員は,岩石試料観察と浸透率測定に基づいて,スロー地震群の成因に関する興味深い考察を行っている.地質学研究者が今後スロー地震群の地質学的描像を描き出すうえで参考となる優れた研究を紹介していただく.
■小平秀一氏(海洋研究開発機構) 講演時間未定
小平氏を代表とするJAMSTEC構造探査チームは,反射法地震探査や海底地形探査に基づいて,2011年東北地方太平洋沖地震において地震破壊が海溝軸付近にまで及んだことを明らかにした.海洋物理探査で明らかになった海溝型巨大地震の実態を本会会員に広く知ってもらうべく講演していただく.
 

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R20  応用地質学一般およびノンテクトニック構造
■釜井俊孝氏(京都大学防災研究所) 30分
釜井氏は,旧地形の谷を盛土した「谷埋め盛土」の地震時や豪雨時の危険性について野外調査・研究を長年続けており,中越地震や東日本大震災時など多数の事例について研究成果を発表している.講演予定の「宅地盛土地すべりの現状と課題」は,応用地質分野としてもその実態を理解し,社会に役立てる必要のあるテーマである.
■笹田政克会員(地中熱利用促進協会) 30分
笹田会員は,自然再生エネルギーとして活用が注目されている地中熱利用研究の第一人者である.講演予定の「地中熱利用の現状と展望」は,応用地質分野としてもその現状について理解し,社会に普及させることが求められているテーマである.
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R23  地球史
■石橋純一郎氏(九州大学) 30分
熱水系は,初期地球を知る上でも,また時代ごとの変遷やイベントを知る上でも重要である.石橋氏は新学術領域「海底下の大河」(平成19〜24年度)のリーダーの一人であり,地球化学と鉱床学の切口から沖縄トラフ掘削や西太平洋背弧群の研究,鹿児島県ミコモトカルデラについての研究を進めている.それらの成果を踏まえて,海底熱水系環境やそこで生み出される堆積物について最新成果を紹介していただく.
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R24 原子力と地質科学
■杤山 修氏(原子力安全研究協会) 30分
杤山氏は,地層処分における性能評価に欠かせない核種移行研究とその議論を長年にわたりリードしてきた.また本セッションを共催する日本原子力学会バックエンド部会長(2002〜2003年)として部会を指導し,バックエンド部会の発展にも尽くしてきた.その他,国の放射性廃棄物小委員会等の要職も歴任するなど,現在も第一線で活躍している.今回は「地質環境に関する長期的安全評価手法」に関する情報や考え方について講演していただく予定である.