鹿児島学術大会での国際交流

 

Wallis, Simon(国際交流担当理事)

  今回の大会の特徴の一つは国際交流にあったと言っても過言ではありません.学術交流協定を結んだ海外の地質学会の代表者らを招待し,また,国際シンポジウムが開催されました.

 

海外学協会からの代表者の招待
  学会活動の更なる発展を考える上で各国の地質学会の代表者の訪問は重要と執行部は考えています.訪問の機会を最大限に活かすために,執行部同士の話あいのみならず研究の面でも発表する機会を設け,折角集まった訪問者と一般会員との交流を促すために訪問者の研究分野に合致したセッションでの講演を実施しました.
  各学会の代表者と発表は次の通りです.

<韓国地質学会>
代表(1):Prof. Daekyo Cheong (会長)
セッション:第四紀地質(9/15)
タイトル:Paleoenvironmental changes of last 10,000 years from Nakdong River Estuary sediments, Korea.
発表者:Cheong, Daekyo・Paik, Seik・Shin, Seungwon・Park, Yonghee

代表(2):Prof. Young-Seog Kim (理事)
セッション: テクトニクス(9/15)
タイトル:Surface ruptures and earthquake hazards.
発表者:Kim, Young-Seog・Choi, Jin-Hyuck

<ロンドン地質学会>
代表:Prof. Alan Richard Lord(国際交流担当理事)
セッション:地学教育・地学史 (9/14)
タイトル:The Geological Society of London—past present and future
発表者:Lord, Alan・ Bilham, Nic

<モンゴル地質学会>
代表:Dr. Tumur-Ochir Munkbhat(会長) 
セッション:岩石・鉱物・鉱床学一般 (9/14)
タイトル:Geology and ore mineralization at Oyu Tolgoi deposit, southern Mongolia
発表者: Munkbhat, Tumur-Ochir

<タイ地質学会>
代表:Mr. Suwith Kosuwan (理事)  
セッション:テクトニクス(9/15)
タイトル:The biggest earthquake of the century in Thailand.
発表者:Wiwegwin, Weerachat・Kosuwan, Suwith・Nuchanong, Tawsaporn

  14日には鹿児島市内で昼食会を催しました.参加者は,海外学協会からの招待者ら7名(Prof. Daekyo Cheong(韓国),Prof. Young-Seog Kim(韓国),Dr. Munkbhat Tumur-Ochir(モンゴル),Mr.Suwith Kosuwan(タイ),Prof. Alan Lord(イギリス), Prof. David Cope (イギリス),Mrs. Takashina-Cope)と地質学会の4名(井龍会長,Wallis国際交流担当理事,海野理事,橋辺事務局長)の計11名でした.また,15日は井龍会長主催のバスツアーに海外からの招聘者は全員参加し,現地のガイドによる桜島と鹿児島の歴史の紹介を楽しみながらグループ内の交流をはかりました.このバスツアーでは準備段階より,高柳栄子会員にお世話になりました.

 

国際シンポジウム「津波ハザードとリスク:地質記載の活用」
  本大会では,国際シンポジウム「津波ハザードとリスク:地質記載の活用」(Tsunami hazards and risks: using the geological record)を開催しました.これはロンドン地質学会との共同開催のシンポジウムで,海外学協会との初めての共催企画でした.
津波と地質学は最近国内外で極めて注目度の高い研究課題です.イギリスは地震が少ない国でプレート境界から離れていますので,津波という現象とあまり縁のない国と考えていらっしゃる方が多いと思います.ですが,イギリスも過去に大きな津波被害をうけた痕跡があります.紀元前6100年20mの津波はスコットランドを襲い,また1755年のリスボン地震の後3m程度の津波はイングランドの西南部に到着し,場所によっては大きな被害ががありました.これらの過去のイベントを背景にイギリスはこの数年,津波リスクを再評価するプロジェクトを開始しました.2015年に同様なテーマで第2回の日本地質学会との共催シンポジウムをイギリスで開催する予定です.両シンポジウムのオーガナイザーはSimon Wallis(日本地質学会), Neil Chapman(イギリス地質学会)で,今回のconvenerとして 藤原 治氏,後藤和久氏,藤野滋弘氏は大きく活躍して下さいました.さらに藤原氏にはシンポジウム後3日間の巡検を案内して頂き,藤野氏は学会の英文誌「Island Arc」の特集を企画しています. なお, 本シンポジウムはグレイト・ブリテン・ササカワ財団からの助成を受けて開催しました.ここに記して謝意を表します.
  津波シンポジウムは計14件の発表があり,そのうち4件は海外研究者でした.
  シンポジウムでは,津波堆積物の認定(ストーム堆積物との区別)や津波の形成メカニズム(断層のずれや海底地滑りの重要性)などのテーマは活発に議論されました.この分野の発展に貢献する成果を期待したいです.
雑談ですが,「津波シンポジウム」は部屋121号室で行われていましたが,部屋を探そうとしていた招待者は困った表情で私に尋ねました.「『121』はどの部屋でもかいてあるみたい.『121』はいったいどこだ」.確かに『121』という数字は,廊下でも部屋でもいろいろなところで見かけました.偶然ながら鹿児島大会は121回目の学術大会でした.漢字が読めないと数字だけをたよりに表示を探しますから,混乱しやすいですね.今後も海外からの参加者のために英語混合の標識などを用意するといいかもしれません.
 

 

海外からの招待者のための見学ツアー(15日). 桜島の前.

後列(左から): S. Day教授 (ユニヴァーシティー・カッレージ・ロンドン大), J. D. Tappin教授(英地質調査所),江 博明教授 (国立台湾大),江婦人,D. Cheong 教授(Kangwon Univ. 江原大), Y.-S. Kim教授(Pukyong Univ. 釜慶大), A. Lord教授 (Senckenberg Research Institute, Frankfurt), J. D. Hansom教授 (グラスゴー大), D. Cope教授 (ケンブリッジ大),高柳栄子博士(東北大), 前列(左から):S. Wallis (名古屋大), 井龍康文会長 (東北大), S. Kosuwan氏 (タイ鉱物資源庁), Munkhbat婦人, T.-O. Munkhbat博士(Oyu-Tolgoi鉱山), Takashina-Cope婦人, C. Chague-Goff博士(ニューサウスウェールズ大)

 このほかにも,日台技術研修のため来日していた台湾の地質調査所3名が大会に参加されたため,14日午前中に井龍会長との懇談の時間を設け,竹内理事と保柳理事も同席し,日本地質学会との協力関係について話し合いました.また,今回は,同じ台湾出身の江 博明教授が国際賞を受賞され,同氏に興味深い受賞講演して頂きました(受賞講演については、2014年11月号ニュース誌へ掲載).

  今後も日本地質学会にとって国際的な活動を継続,発展させていくことは重要な使命です.特に,日本で行われている地質学研究の成果をどのように発信するか,国際的な連携により研究をさらに発展させていくにはどのようにするかという2つの課題は重要であり,学会をあげて取り組みたいと思います.