日本地質学会125周年を迎えるにあたって

125周年記念事業準備委員会
委員長 矢島道子
委員 天野一男・永広昌之
佐々木和彦・宮下純夫


  日本地質学会は地質学の発展や普及を目指して、1893(明治26)年に創立されました。2018年に125周年を迎えます。地質学徒としては大変嬉しいことです。75周年、100周年には記念出版物が刊行され、学会の歴史や研究の動向などが総括されています。125周年に関しては、理事会のもとに125周年記念事業準備委員会(矢島、天野、佐々木、永広、宮下)が設置され、検討を重ねてきました。その結果、日本地質学会を飛躍的に発展させる絶好の好機ととらえて、本事業に取り組む方向が確認されています。この機会を、地質学の歩みを振り返り、地質学への時代の要請を鑑みて、これから何をなすべきかを一緒に考える第一歩にしたいと思います。
  イギリスの地質学会は1807年に世界で最初に創立され、すでに2007年に200周年を祝いました。イギリスに続いて、1830年にフランス、1848年にドイツ、1885年にアメリカと、世界各国で地質学会が創立されました。それぞれすでに125周年を祝っています。地質学という学問が古くから確立されていたということがわかります。日本では、地質学会よりやや早く1879(明治12)年東京地学協会が、1880(明治13)年に日本地震学会が創立されています。そのような中で日本地質学会は地質学を明確に担い、営々と築き、地球科学関連学会中でも古い歴史をほこっています.

  私たちの立っているこの大地がいつごろ、どうやってできたのだろうという疑問に応えようとして、地質学は始まりました。地質学の起源を18-19世紀のハットン(James Hutton、1726 - 1797)やライエル(Charles Lyell、1797 - 1875)よりも前の18世紀のビュッフォン(Georges Buffon 、1707 - 1788)、ソシュール(Horace-Bénédict de Saussure, 1740–1799)やキュヴィエ(Georges Cuvier、1769 - 1832)に求めたり、あるいはもっと前のデンマークのステノ(Nicolaus Steno, 1638 - 1686)に求めたりする人もいます。いずれにしろ、地質学は、大地の営みを知り、それを科学的に解明し、人間の生活に役立てることが大きな目標の学問です。
  地球は46億年という長い時間をもっています。地質学はこの長い時間を内にもって発言することができます。生命の発生以来、どのような道をたどって、私たちヒトが生れてきたのかも明らかにしようとしています。地球は1周4万kmという大きな空間を有しています。この空間を縦横に駆け廻るのが地質学です。そして、今や、地質学はその専攻範囲を大地ばかりではなく、深海底や地底深く、あるいは、大気空間、惑星空間や宇宙空間にまで広げています。

  現在、人間社会は地質学に多くの課題を突きつけています。特に2011年の東日本大震災と原発災害は、地質学の重要性を強く示しています.将来発生が予測される大地震や火山噴火、大規模自然災害などへの地質学からの貢献が求められています。また、エネルギーや資源をどこに求めていくのかに対しても、地質学からの貢献が期待されています。私たちは、営々と125年築いてきた日本地質学会の記念事業を、地質学や地質学会の発展の絶好の契機となるように今から準備を始めることを呼びかけます。
  125周年に向けて、これから様々な活動が始まりますが、会員の皆様からの建設的なご提案や準備の諸活動への積極的な参加をお願いいたします。