Vol. 24  Issue 2(June)

Invited Article

1.  Evolution Processes of Ordovician-Devonian Arc System in the South-Kitakami Massif and its Relevance to the Ordovician Ophiolite Pulse
Kazuhito Ozawa, Hirokazu Maekawa, Ken Shibata, Yoshihiro Asahara, Masako Yoshikawa

オルドビス紀−デボン紀の南部北上山地島弧発達過程とオルドビス紀オフィオライトパルスとの関連
小澤一仁・前川寛和・柴田 賢・淺原良浩・芳川雅子


南部北上山地のオルドビス紀島弧オフィオライト(早池峰・宮守オフィオライト)と高圧低温型変成岩類(母体変成岩),および関連する古生代初期の地質体に関する年代,地質,岩石,地球化学的データと新たに得た補足データに基づいてオルドビス紀-デボン紀の南部北上島弧発達過程を再検討し,次のようなシナリオを得た.後期デボン紀以前に東から西への沈み込み極性の変化があり,早池峰・宮守オフィオライトは,東に向かう沈み込み帯の上で,上盤プレート展張に駆動された背弧海盆拡大の初期と前弧域拡大の後期の断熱融解ステージとそれらに挟まれたスラブ由来流体の影響を強く受けた中期融解ステージを経て形成された.弱いプレート間カップリングの条件下でスラブ後退とそれに引き続くスラブ断裂によって発生した非定常的三次元マントル流動が中期から後期の融解を支配したというテクトニックモデルを提案する.オルドビス紀オフィオライトパルスを特徴づける含水鉱物に富んだマントルを持つオフィオライトは,〜5億年前のマントルの熱状態や水の循環の特異性を反映していると考えられる.

Key Words : Hayachine-Miyamori ophiolite, island arc evolution, ophiolite pulse, South Kitakami.

Rseach Article

2.Graphitization of carbonaceous material in sedimentary rocks on short geologic time-scales: An example from the Kinsho-zan area, central Japan
Natsumi Mori, Simon wallis and Hiroshi Mori

中部日本・金生山地域を例にした,地質学的短時間スケールにおける堆積岩に含まれる炭質物の石墨化
森 なつみ・サイモン ウォリス・森 宏


初期の非晶質な炭質物は,被熱にともなってより結晶質になる.その構造変化は最高被熱温度のみならず被熱時間にも依存
する.10万年以上の時間スケールにおいて熱を被った天然試料のラマンスペクトルは,結晶化度が定常状態に達することを示す.一方,室内実験の研究では,3.5週間,1000℃の加熱後でも炭質物の結晶化度はほとんど変化しないことが示されている.
結晶化作用についての時間スケールのさらなる制約には,数年〜数万年スケールでの検証が必要であり,このような長時間の時間スケールに関しては,被熱時間の長さが明らかである炭質物を含有する天然の岩石を例とすることでのみ,導くことが可能である.岐阜県・赤坂石灰岩地域の幅13mの岩脈周辺に発達
する接触変成作用についての熱モデリング結果は,被熱時間スケールが1〜100年であることを示す.ラマンスペクトルは,岩脈の3m以内において炭質物の結晶化度の著しい増加を示す.接触変成域において推定される温度と炭質物の結晶化度の比較結果は,岩脈近傍であっても,炭質物が定常状態に達しないことを示す.この変化は,数年の被熱時間スケールにおいて(モデリング温度が)550℃以上で開始する.天然の地質学的な条件下では,炭質物の結晶化作用における定常状態の獲得には,約100年以上の時間スケールの加熱が必要である.本研究は,岩石中の炭質物結晶化作用のカイネティクスを決定するために,天然実験研究を用いることが有用であることを示す.

Key Words : carbonaceous material, contact metamorphism, Raman spectroscopy, thermal modeling
 

3.Laboratory measurements of‘porosity-free’intrinsic Vp and Vs in an olivine gabbro of the Oman ophiolite: Implication for interpretation of the seismic structure of lower oceanic crust
Satoshi Saito, Masahiro Ishikawa, Makoto Arima, Yoshiyuki Tatsumi

オマーンオフィオライト産かんらん石斑れい岩の「空隙フリー」P波・S波速度測定:下部海洋地殻地震波速度構造の解釈における意義
齊藤 哲・石川正弘・有馬 眞・巽 好幸


海洋地殻条件のような比較的低圧下での弾性波速度測定実験では,試料内に存在する空隙が岩石のP波速度(Vp),S波速度(Vs),Vp/Vs比に強く影響を与えてしまう.一方,ピストン・シリンダー型高温高圧発生装置を用いて広い温度圧力下(室温〜400℃,0.2〜1.0GPa)で測定実験を行うことにより,海洋地殻条件における岩石の「空隙フリー」Vp,Vs,Vp/Vs比を精度良く求めることが可能である.本論では,オマーンオフィオライトに産するかんらん石斑れい岩の「空隙フリー」Vp,Vs,Vp/Vs比を求め,下部海洋地殻地震波速度構造の解釈における意義を述べる.

Key Words : elastic wave velocity, gabbro, oceanic crust, Oman ophiolite, piston-cylinder high-pressure apparatus, porosity.

4.Foldback reflectors near methane hydrate bottomsimulating reflectors: Indicators of gas distribution from 3D seismic images in the eastern Nankai Trough
Marc Humblet, Chuki Hongo and Kaoru Sugihara

メタンハイドレート海底疑似反射面の縁辺に見られる「折り返し反射面」:東部南海トラフの三次元反射法地震探査記録におけるガス分布の指標
大塚宏徳・森田澄人・棚橋 学・芦 寿一郎


海底下浅部における流体の分布や挙動を理解することは,ガスハイドレートの形成や全球的な炭素循環を考えるうえで重要である.反射法地震探査を用いたガス分布の推定は,多くの場合ガス分布の境界は不明瞭である事に加え,系統的な手法が確立されていないことから容易ではない.本研究では東部南海ト
ラフで実施された三次元反射法地震探査に認められた,ガスハイドレートの形成や流体移動に関連するとみられる特徴的な反射面について報告する.その形態からこの反射面を本研究では「折り返し反射面(Foldback reflector, FBR)」と呼ぶ.FBRはガス(メタン)ハイドレート海底擬似反射面(Bottom simulating reflector, BSR)の縁辺から下方に向けて折り返すことを繰り返 した形状をしており,全体として地層に平行な「折り目」を持つ蛇腹状の構造を呈する.FBRは折り返す毎に位相を反転させる.FBRを側方に跨いで異なるサイスミックファシスが認められ,BSRより下位の地層は相対的に低振幅で高周波数成分に乏しく反射面が不明瞭な傾向を示すのに対し,BSR分布の外側にある地層は明瞭な反射面を維持している.また,反射面が不明瞭な領域は周囲より弾性波速度が低い領域に対応している.このような低速度異常および反射特性は堆積層中にガスが存在することを示唆している.FBRは隆起帯の良く成層した堆積層に発達する傾向がある.FBRの傾斜方向は,FBRの発達する地層の傾斜に規制されているとみられる.FBRの縁辺はしばしば反射強度の大きい反射面に対応している.このようなFBRの発現は,BSRと同様に地域的な隆起や層理面沿いの流体移動がFBRの発達に関わっていることを示唆している.

Key Words : 3D seismic survey, accretionary prism, fluid migration, methane hydrate, uplift.
 

5.Cretaceous granitoids and their zircon U-Pb ages across the south-central part of the Abukuma Highland, Japan
Shunso Ishihara, and Yuji Orihashi

日本,阿武隈高地,中央南部に分布する白亜紀花崗岩類および含まれるジルコンU-Pb年代の東西変化
石原舜三・折橋裕二


阿武隈変成深成岩帯の中央南部を横切る東西方向で,花崗岩類のジルコンU-Pb年代を調べた.測定ジルコン年代は,古典的分類法である“旧期”,“新期”花崗岩類を支持しない.西部地域の竹貫・御斉所変成岩類において花崗岩類を西から東へ第蟻咫ぢ茘饗咫ぢ茘径咾吠けると,第径咾芭仗片岩相に貫入する入遠野石英閃緑岩中の花崗閃緑岩が調査地域内で最も古い121 Maを示した.北方の花崗閃緑岩も112 Maと,やや大きい値を示す.しかし,竹貫-御斉所変成岩類に貫入する他の花崗岩類は103−99 Maと若い年代を示すに過ぎない.両雲母花崗岩と黒雲母花崗岩類は99 Ma態度の若い年代を示した.阿武隈変成帯と領家変成帯の花崗岩活動は石英閃緑岩質マグマの上昇・貫入に始まり,両雲母花崗岩の貫入で終息した.畑川破砕帯以東の花崗岩類からは110−106 Ma(4試料)が得られ,北上山地と同様な古い値は得られなかった.日本列島全体としての白亜紀の花崗岩活動は,北上山地,阿武隈高地,領
家帯,そして西南日本の山陰帯へと若くなる傾向がみられる.

Key Words : Abukuma Highland, Cretaceous granitoids, U-Pb age, zircon.
 

6.Petrology and geochemistry of ultrahigh-temperature granulites from the South Altay orogenic belt, northwestern China: Implications for metamorphic evolution and protolith composition
Xiaoqiang Yang, Zilong Li, Huihui Wang, Hanlin Chen, Yinqi Li and Wenjiao Xiao

南アルタイ造山帯の超高温グラニュライトの岩石学・地球化学:変成条件の変遷と源岩組成の示唆

中国北西部,南アルタイ造山帯の超高温(UHT)グラニュライトは下部地殻の構成物と古生代における中央アジア造山帯のテクトニックな進化について重要な解答を提供する.本論文はアルタイUHTグラニュライトの源岩と変成条件の進化を理解するために,全岩地球化学及び鉱物の特徴を明らかにした.アルタイグラニュライトは−9.27〜−3.95と負の判別関数値(DF)を示すことから,堆積岩,おそらくは泥質岩起源と思われる.920−1010℃へ,9kbar以上のピーク変成温度圧力条件とスピネル(低ZnO)+石英及び斜方輝石(Al2O3 9.2 wt%以下)+珪線石+石英の共生は,超高温変成作用を示す.二段階の後退変成作用が認められる;はじめに750℃,5.2-5.8 kbarに等温減圧し,次いで4.8−5.2 kbar,520−550℃ へと温度が低下した.先行研究と合わせて,アルタイUHT泥質グラニュライトが示す時計回りの温度圧力変化は,シベリアプレートとカザフスタン−ジャンガープレート間の衝突・付加過程を示唆すると考えられる.

Key Words : geochemistry, mineral characteristics, provenance reconstruction, P-T estimate, South Altay orogenic belt, ultrahigh-temperature granulite.
 

7.Geologic evidence for late Quaternary repetitive surface faulting on the Isurugi fault along the northwestern margin of the Tonami Plain, north-central Japan
Tadashi Maruyam, Masaru Saito

砺波平野北西縁に分布する石動断層の第四紀後期における地震断層活動
丸山 正・齋藤 勝


砺波平野北西縁に分布する石動(いするぎ)断層の第四紀後期の活動性を明らかにするため,航空レーザ詳細地形データ解析,現地踏査,トレンチ掘削調査を実施した.その結果,同断層が更新世後期以降に地震断層を伴う地震運動を繰り返し,その最新活動は完新世後半であることが明らかになった.変動地形学的に認定される石動断層の活断層トレースは短い区間に限定されるが,これは同断層に平行して流れる小矢部川の侵食や埋積の影響を受けたことによるものであり,地震断層を伴う大地震を引き起こす規模の断層が伏在している可能性がある.

Key Words : active fault, backthrust, Isurugi fault, LiDAR,thrust fault, trenching.
 

8.Tectonic reconstruction of batholith formation based on the spatiotemporal distribution of Cretaceous-Paleogene granitic rocks in southwestern Japan
Kazuya Iida, Hikaru Iwamori, Yuji Orihashi, Taeho Park, Yong-Joo Jwa, Sung-Tack Kwon, Tohru Danhara, and Hideki Iwano

西南日本に分布する白亜紀−古第三紀花崗岩の時間空間分布に基づく成因とテクトニクスの復元
飯田和也・岩森 光・折橋裕二・Taeho Park・Yong-Joo Jwa・Sung-Tack Kwon・檀原 徹・岩野英樹


本論文では,沈み込み帯における花崗岩の成因とテクトニックセッティングを明らかにするために,西南日本白亜紀?古第三紀の花崗岩の詳細な年代測定を行った.鳥取,岡山,香川県に分布する92サンプルのU-Pbジルコン年代測定を行い,南から北にかけて段階的に年代が若くなることを示した.このよう
な移動を説明するモデルとして,海嶺沈み込みと沈み込み角度の変化が考えられる.数値計算により両モデルの溶融領域を計算し,観測との比較を行った.海嶺沈み込みモデルでは,セグメントを伴った45 km幅のリッジが1.6 cm/yrで沈み込むことにより溶融領域がおよそ再現できることが分かった.一方で,沈み込み角度の変化で説明する場合,沈み込み角度が37°から20°に変化することにより,段階的な時空間変化を再現できることが分かった.海嶺沈み込みモデルの方が,火成活動が全体として限られた期間に起こる点をより良く説明する.

Key Words : age, granite, heat source, ridge subduction, SW Japan, zircon.
 

9.Dating of altered mafic intrusions by applying a zircon fission track thermochronometer to baked country rock, and implications for the timing of volcanic activity during the opening of the Japan Sea
Hiroyuki Hoshi, Hideki Iwano, Tohru Danhara, and Naoyoshi Iwata

変質苦鉄質岩の年代を被熱母岩のジルコンFT熱年代測定によって決める:日本海拡大期の火山活動タイミング
星 博幸・岩野英樹・檀原 徹・岩田尚能


変質苦鉄質岩の貫入年代を一般的な放射年代測定で決めるのは難しい.我々は今回,貫入によって焼かれた母岩にFT熱年代学の手法を適用することで変質苦鉄質岩の貫入年代決定を試みた.長野県高遠地域に分布する変質ドレライト岩脈の年代を決定するために,母岩の白亜紀花崗岩から試料を採取した.貫入面から8mm以内のジルコンは一様に17〜16 MaのFT年代を示した.FT長解析により,白亜紀以降に蓄積されたFTはドレライト貫入時にリセットされ,現在見られるFTはその後に生じたものであることが確認された.貫入面から20 mmまで範囲を広げると,FTがリセットされたジルコンとそうでないジルコンの混合による年代が得られた.以上の結果はドレライトの年代が17〜16 Maであること,および被熱母岩に対するFT熱年代測定が変質苦鉄質貫入岩の年代決定に有効であることを示す.西南日本東部では18〜15 Maに火山フロントが前弧側に張り出し,火山活動が散在的に起こった.これは日本海拡大期に前弧側マントルウェッジまで熱いアセノスフェア物質が侵入したためかもしれない.なおアパタイトはより若いFT年代を示し,中期中新世以降の局所的なマグマ活動の影響を受けた可能性がある.

Key Words : apatite, dolerite, fission track dating, fission track thermochronometry, geochronology, Japan Sea opening, mafic intrusion, Miocene, Southwest Japan, zircon.
 

10.Petrogenesis of diabase from accretionary prism in the southern Qiangtang terrane, central Tibet : Evidence from U-Pb geochronology, petrochemistry and Sr-Nd-Hf-O isotope characteristics
Jin-Xiang Li, Ke-Zhang Qin, Guang-Ming Li, Jun-Xing Zhao, and Ming-Jian Cao

中央チベット,南部Qiangtangテレーンの付加体中のダイアベースの成因論

Lhasa及びQiangtangテレーン間のBangong-Nujiang(BNS)縫合帯は,重要な境界を占め,その岩石学的成因についてはよくわかっていない.南部Qiangtangテレーンの付加体のダイアベース中のジルコンは181.3 ± 1.4 MaのU-Pb年代を示す.ダイアベースはソレアイト質玄武岩組成であり,やや軽希土類元素に富むパターン,さまざまな程度に富む不適合元素(Th, Rbなど),HFS元素(Nb, Taなど)異常を欠く点で,エンリッチした中央海嶺玄武岩(E-MROB)に類似する.相対的に均質な全岩Nd同位体組成(εNd(t)=7.3-9.1)とジルコンのHf-O同位体組成(εHf(t)=14.8-16.1,δ18O=4.57-6.12 ‰)は,地殻の混染がほとんどなく枯渇したマントルが融解したことを示す.全岩化学組成変化からダイアベースはBangong-Nujiang海の中央海嶺とプルームの相互作用によって生じたと考えられる.

Key Words : diabase, petrogenesis, Qiangtang terrane, Tibet, zircon Hf-O isotope.

[Thematic Article]Petrogenesis and chemogenesis of oceanic and continental orogens in Asia: Recent progress, Part II

11.Extensive normal faulting during exhumation revealed by the spatial variation of phengite K-Ar ages in the Sambagawa metamorphic rocks, central Shikoku, SW Japan
Toru Takeshita, Koshi Yagi, Chitaro Gouzu, Hironobu Hyodo,and Tetsumaru Itaya

西南日本,四国中央部三波川変成岩中のフェンジャイトK-Ar年代の空間変化に基づき明らかにされた上昇削餝時の広範囲な正断層活動
竹下 徹・八木公史・郷津知太郎・兵藤博信・板谷徹丸


変成岩の地表に向けての上昇において,変形モードは上昇とともに延性変形から脆性変形に変化する.我々は猿田川地域の三波川変成岩(広義)を構成する泥質片岩中のフェンジャイトK-Ar年代が断層活動によって乱されていないかを検討するため,その空間変化を調査した.その結果,我々は下位ガーネット帯とアルバイト−黒雲母帯およびアルバイト−黒雲母帯と上位ガーネット帯の2つの境界を横切って,年代が約5百万年変化していることを明らかにした.これらのフェンジャイトKAr年代の空間変化は,おそらく脆性-延性転移の条件(約300℃)で生じたD2時相の大規模な正断層活動によって変成岩層が切断されたことによる.理由はアクチノライト岩が前者の境界に形成されているからである.ここで,D2時相直前には変成岩層が水平であり,変成岩の上昇速度が以前推定されていた値,1km/百万年であった仮定すると,5百万年のフェンジャイトK-Ar年代の変化は,以前の研究で報告されていた北傾斜の低角正断層に沿って約10 kmの変位が生じたことを示す.アクチノライト岩からのフェンジャイト40Ar/39Ar年代(約85 to 78 Ma)は周囲の断層活動を受けていない泥質片岩のK-Ar年代と合理的に比較出来る.その理由として周囲の泥質片岩のK-Ar年代も,フェンジャイト中のアルゴンの拡散閉止温度(約500−600℃)よりもはるかに低い脆性-延性転移の温度条件以下に冷やされてからの経過時間を示していることが考えられる.

Key Words : exhumation, normal faulting, phengite K-Ar ages, Sambagawa metamorphic rocks.

[Thematic Article]Carbonate sedimentation on Pacificcoral reefs, Part II

12.Carbonate sedimentation in seagrass beds on Ishigakijima, Ryukyu Islands, southwestern Japan
Keita Fujita, Ryuji Asami, Hideko Takayanagi, and Yasufumi Iryu

琉球列島石垣島の海草藻場における炭酸塩の堆積過程
藤田慶太・浅海竜司・高柳栄子・井龍康文


われわれは,海草藻場の生物相・堆積相を検討し,そこでの炭酸塩の堆積過程を明らかにするため,琉球列島石垣島の名蔵および吉原において,海岸から沖合に向けて引いた3本の測線上で,海草藻場の生物学的・堆積学的調査を行った.両地点では海草藻場は沿岸に対してほぼ並行に配列し,その分布幅は60 mから110 m以上に達する.海草藻場の卓越種はThalassiahemprichiiおよびCymodocea rotundataであり,随伴種としてC. serrulataがみられた.海草の被覆率には明瞭な季節変化がみられ,平均被覆率は夏期から秋期(7〜10月)に相対的に高く,冬期から春期(1〜4月)に相対的に低かった.海草藻場の表層堆積物は,中粒〜極粗粒砂大の生砕物が優勢であり,grainstoneないしpackstone様の岩相を呈していた.生砕物として,サンゴ,サンゴモが多く認められ,底生有孔虫,軟体動物,ウニ,ハリメダが伴ってみられた.名蔵では,grainstone/packstoneの下位に,rudstone様の岩相を呈する粗粒な堆積物(サンゴ片を含む)が認められた.表層堆積物の直下(海底から10〜20 cm以深)の堆積物は黒色を呈しており,海草藻場一帯では海底下に還元環境が広がっていることが示唆された.名蔵および吉原のコア試料より採取されたサンゴ片(それぞれ,コア深度24.5 cmおよび16.5 cm)の放射性炭素年代は,それぞれ2781〜2306 cal BPおよび4374〜3805 cal BP(2σ)であった.これは,海草藻場での堆積速度が極端に遅い(<0.1 mm/年)ことを示している.堆積物の流入量は,冬期から夏期にかけて(1月〜7月)よりも,夏期から冬期にかけて(7月〜1月)の方が多く,これは夏期から冬期に風や嵐によって大量の堆積物が運搬されるためだと考えられる.堆積物の流入量は,名蔵では74〜96 kg CaCO3/m2/年,吉原では21〜57 kg CaCO3/
m2/年で,周囲と比べて著しく多く,これは海草藻場が堆積物をトラップする機能を有していることを示す.このように,琉球列島の海草藻場では,多量の堆積物が流入しているにも関わらず,堆積速度が極端に遅く,流入した堆積物のほぼ全ては海草藻場の外へ移動していると思われる.

Key Words : carbonate, Ryukyu Islands, seagrass, seagrass bed.