2012年度Island Arc編集委員会報告
日本地質学会Island Arc編集委員会
日本地質学会の公式英文誌としてIsland Arc(IAR)が発行されてから,今年で21周年となります. 2013年からは,IARの出版が全面的にオンライン化され,カラーによる図表類の出版に制限がなくなりました.ここでは出版社であるWiley社から送られてきた出版報告をもとに,IARの現状を日本地質学会の会員の皆様に御紹介したいと思います.
第21巻に19編の論文を掲載
2012年発行の第21巻には19編(Pictorialの1編およびInvited paperの1編を含む)の論文が掲載され,総ページ数は349ページでした.残念ながら,このページ数は2012年の契約ページ数(825ページ)に大きく及ばない数字です.
IARの論文数と総ページ数を振り返ってみますと,2006年は44編(548ページ),2007年は47編(606ページ),2008年は37編(594ページ)でしたが,W-B社と2009年以降のページ数増の契約を行ったため,2009年は40編(672ページ),2010年は52編(734ページ)と増加傾向にありました.しかし,2011年に37編(555ページ)と減少してからは,2年続けての減少傾向にあります.2012年は特集号が1つも組まれなかったことが,このような論文数ならびに総ページ数が大幅に減少した原因の1つと考えられます.しかし,2013年には2つの特集号が組まれ,また現在の投稿数は過去半年間で40件(新規が30件)におよんでいます.このような投稿傾向が継続し,受理論文の数が増加すれば,2013年には,論文数や総ページ数は2009年の水準に回復できることが期待されます.
第21巻掲載論文の第1著者の所属は,日本が15編で最も多く,続いてイラン(3),中国(2)韓国(2),インド(1),オーストラリア(1)となっています.一方,論文の投稿数では,日本(47),中国(9),イラン(8),インド(4),アメリカ(2),韓国(1),その他の国(3)となっています.2012年以降,イランからの投稿数が増加する傾向が認められます.しがたいまして,今後は,台湾・インドネシア・マレーシア・ニュージーランドなどのアジアやオセアニアの周辺諸国からの投稿を促す必要があると思われます.
2012年IFは1.071
本年6月にトムソンロイター社より2012年のインパクトファクター(IF)が発表されました.2012年のIAR のIFは,昨年よりわずかに上昇し「1.071」でした. 2006年の0.762以降,2007年の0.837,2008年の1.038,2009年の1.182と,わずかではありますが上昇傾向にありましたが,2010年は1.027に下降し,2011年には1.012となっていました.一方, IARのGeosciences(Multidisciplinary)分野での位置は,2009年の82位(153誌中),2010年の105位(165誌中),2011年の113位(170誌中)と低下傾向にあり,2012年は113位(170誌中)で横ばいでした.
IFは必ずしも雑誌や掲載論文の質を表すものではありません.また,論文が内容ではなく,掲載雑誌のIFの高低で判断されるという弊害があることも指摘されています.しかし,最近は,論文の投稿先を選ぶ際に,IFを考慮に入れる方が多くなっており,これは特に若手研究者に著しい傾向です.よって,IFの上昇は,IARの発展のために欠かせない要件だと言えます.2012年IFの対象論文(2010年および2011年にIARに掲載された論文)をみてみると,相当数の論文が未引用となっており,これがIARのIF低迷の原因の1つとなっています.「日本の研究者は,日本人の研究をリファーしないことで,書いた論文のステータスがあがると思っているようにみえる」という話をした海外の研究者がいるそうですが,IARには質の高い論文が多く掲載されていますので,論文作成の際には,積極的なIAR掲載論文の引用をお願い致します.
Island Arc賞
2013年の「Island Arc賞」は,
Hattori, K., Wallis, S., Enami, M., and Mizukami, T. (2010)
Subduction of mantle wedge peridotites: Evidence from the Higashi-akaishi ultramafic body in the Sanbagawa metamorphic belt. Island Arc, v. 19, 192–207
に授与されました.授賞式は日本地質学会120年学術大会(仙台大会)において行われ,石渡会長から賞状とメダルが、Wiley Blackwell社より賞金が服部様に贈呈されます.
最多ダウンロード賞
2013年の「最多ダウンロード賞」は,2007年〜2011年に出版された論文のうち,2012年に最もダウンロードされた論文に対して,Wiley社より与えられます.ただし,同一論文に複数回授賞しないという制約があります.以上の規則に基づいた2013年最多ダウンロード賞は,
Ayalew, D., and Ishiwatari, A. (2011)
Composition of rhyolite from continental rift, continental arc and oceanic island arc: Implications for the mechanism of silicic magma generation. Island Arc, v. 20, p. 78–93.
に授与されました.
今後のIARに関して
2013年よりIARは完全電子ジャーナル化しました.今後,完全電子化のメリットであるカラー図版の無料化とともに,受理からオンラインで論文が掲載されるまでの期間の短縮化を図り,さまざまな研究領域の学術論文を迅速に掲載できる国際誌として発展させていいきたいと考えております.
既に別途ご報告しましたように,当面現雑誌名の「Island Arc」を継続することが決まりました.IARは地質学雑誌と同様,地球科学に関する幅広い研究領域をカバーする国際学術雑誌です.最近では,古生物や古気候,珊瑚礁,ハイドレート,CO2貯留などに関する論文の投稿が徐々に増えてきています.今後もさまざまな研究領域から論文の投稿数が増加されるよう,皆様にご協力頂きたいと思います.
IARの論文数や引用度を向上させるための試みとして,特集号やReview Paperの企画がこれまでに行われてきました.現在,4つの特集号の企画が進んでいます.皆様方が関係される国内外での研究集会や学会で発表された論文に基づいて,新たな特集号の企画や提案を編集事務局へお寄せ下さい.また,それぞれの研究分野の学術動向に照らし合わせたReview Paperのご提案も心よりお待ちしています.
2008年〜2011年の4年間,編集委員長を務められた井龍康文様と前川寛和様が継続されていた特集号の編集作業が一段落しました. 2012年より伊藤 慎と海野 進が編集委員長を務めさせていただいていますが,この1年半の間,前両編集員長には,私どもの編集作業全般にわたって多大なご協力を頂いてまいりましたことをご報告するとともに,お二人のご尽力に心より謝意を申し上げます.編集事務局長は2009年より原 英俊が担当してまいりましたが,2014年3月で交代の予定です.
今後とも,皆様方には,IAR編集委員会に対しまして,御支援をよろしくお願い申しあげます.