Vol. 20  Issue 2 (June)

Island Arc Award (2011)

Title: Evaluation of factors controlling smectitetransformation and fluid production in subductionzones: Application to the Nankai Trough.
Authors: Demian M. Saffer, Michael B. Underwoodand Alexander W. McKiernan
References: Island Arc, 17, 208–230 (2008).

沈み込み帯におけるスメクタイトの分解と流体の放出をコントロールする要素の評価:南海トラフへの応用
 

 

 

通常論文

[Research Articles]

1. Oxygen and lead isotopic characteristics of granitic rocks from the Nansha block (South China Sea): Implications for their petrogenesis and tectonic affinity
Quanshu Yan, Xuefa Shi and Naisheng Li

南沙微小地塊 (南シナ海)の花崗岩質岩の酸素同位体及び鉛同位体の特徴:成因とテクトニックな類似性について
Quanshu Yan, Xuefa Shi and Naisheng Li

南シナ海地域の先新生代の地史は,今なお議論されている問題である.南シナ海の発達を明らかにするためには,微小地塊に含まれる花崗岩類の成因と帰属をより正確に理解することが必要である.本研究では,南沙微小地塊の2カ所のドレッジで回収された花崗岩質岩試料の全岩酸素同位体比および鉛同位体比を求めた.酸素同位体のデータをすでに公表されているストロンチウム同位体のデータと結びあわせることで,グループIの岩石類(δ18O = 6.00–7.20‰; average = 6.64‰)が,微小地塊の南東側における中生代沈み込み帯から付加された物質あるいは流体によって汚染されたマントルに由来することが明らかになった.グループIIも同様にマントルに由来するが,二次的に地殻物質による汚染を受けている.南沙微小地塊は高い放射性鉛比 (206Pb/204Pbi = 18.602–18.756, 207Pb/204Pbi = 15.660–15.713, 208Pb/204Pbi = 38.693–38.893)をもち,このことは,南沙微小地塊が構造的に南陵县-海南地塊あるいは南シナ地塊に属することを意味している.この結論は,以前に行われたNd同位体の研究結果と良い一致をみる.我々の研究の結果は,南シナ海に散点的に分布する他の微小地塊の中には,南シナ地塊の破片が含まれる可能性を示唆している.先新生代における南シナ海地域の発達史をより正確に求めるためには,さらなる研究が必要である.
 
Key Words : Geochemistry, granitic rock, Mesozoic era, Nansha microblock, petrogenesis, South China Sea
 

2. In-situ stress at a site close to the Gofukuji Fault, central Japan, measured using drilling cores
Yasuo Yabe and Kentaro Omura

掘削コアから推定した牛伏寺断層近傍の地殻応力
矢部康男・小村健太朗

牛伏寺断層近傍で行った掘削により深度327mと333mで採取されたコア試料に,変形率変化法(DRA),AE法,AE率変化法(AERA)を同時適用し,地殻応力を推定した.いずれの深度でも,横ずれ断層型の応力場が推定された.掘削時に,深度333mでは,孔壁を構成する岩石である花崗閃緑岩の引張強度と同程度の約6.4MPaの引張応力が孔壁に作用した.深度327mでは引張応力は,同強度よりも小さかった.これらは,Drilling-Induced Tensile Fractureが深度329-334mで発生したことと整合する.牛伏寺断層に作用する法線応力に対するせん断応力の比は0.4-1.0で,室内岩石実験の摩擦係数と同程度である.これは,地震の再来間隔に基づく長期評価で,地震発生の切迫度が高いと評価されている同断層の強度がすでに回復していることを表しているのであろう.
 
Key Words : core method, fault strength, Gofukuji Fault, in-situ stress
 

3. Relicts of deformed lithospheric mantle within serpentinites and weathered peridotites from the Godzilla Megamullion, Parece Vela Back-arc Basin, Philippine Sea
Yumiko Harigane, Katsuyoshi Michibayashi and Yasuhiko Ohara

フィリピン海パレスベラ背弧海盆のゴジラメガムリオンから採取された蛇紋岩と風化したかんらん岩に残されたマントルリソスフェアの変形構造
針金由美子・道林克禎・小原泰彦

フィリピン海パレスベラ海盆のゴジラメガムリオン全体から採取された蛇紋岩と風化したかんらん岩の変形構造過程を明らかにした.これらは構造ごとにマッシブ,フォリエーテッド,マイロナイトに分けられた.岩石に残されていた初生的な鉱物(斜方輝石,単斜輝石,スピネル)には塑性変形の際に見られる微細構造が観察されたが,蛇紋石にはそのような変形構造は見られなかった.以上の観察結果からマントルリソスフェアにおいて延性剪断帯が発達したことと,変形の後に蛇紋岩化作用が生じたことを示唆する.これらの構造を持つ岩石がゴジラメガムリオン上に分布していることから,マントルリソスフェアに生じた変形構造はゴジラメガムリオンの形成過程に関連していたと考えられる.
 
Key Words : Godzilla Megamullion, Parece Vela Basin, peridotite, Philippine Sea, serpentinite
 

4. Slab partial melts from the metasomatizing agent to adakite, Tafresh Eocene volcanic rocks, Iran
Mohammad R. Ghorbani and Rasoul N. Bezenjani

イラン,Tafresh 始新世火山岩類中のアダカイト生成に関わるスラブ部分溶融と交代作用
Mohammad R. Ghorbani and Rasoul N. Bezenjani

Urumieh–Dokhtar Magmatic Assemblage (UDMA)の一部をなすTafresh地域に分布する始新世火山岩類は,延長2000 kmにわたって地球化学的および鉱物学的にユニークな特徴をもつ.顕著な急勾配をもつ希土類元素パターンと角閃石斑晶の広範な出現は,主に安山岩質組成からなる始新世火山岩類で卓越する二つの大きな特徴である.アダカイト,すなわちここでは,角閃石(+黒雲母)に富むデイサイト(SiO2=61-64 wt%)の岩株と岩脈,を伴う火山岩類全体の地球化学的および鉱物学的特徴の一致は,一連の火山岩類の成因に関するスラブ由来のメルトの役割を明らかにするための鍵になる.スラブに由来する溶融は,混成岩(安山岩)のもととなったマントルウエッジの交代作用を受けた部分で生じている現在進行中のプロセスである.スラブ溶融交代作用の顕著な特徴をもつ玄武岩類の存在は,スラブ溶融を支持するもう一つの証拠である.島弧性のカルクアルカリ火山岩類とスラブ溶融交代作用を受けた玄武岩類および混成安山岩類との互層の存在は,スラブの溶融が沈み込みによって引き起こされたことを示唆している.爆発的な噴火の結果と考えられるTafreshカルデラの形成は,アダカイトの火山活動がガス成分を含むマグマの活動であることと調和的である.マグマがガス成分を含んでいたであろうことは,含水鉱物が普遍的に認められることからわかる.始新世の時代,沈み込むスラブはTafresh地域直下の角閃岩-エクロジャイトの形成に十分な深さに達していたと考えられる.沈み込みの幾何学的配置や下位に位置するマントルのより急激な地温勾配によって生じたスラブの変形は,UDMAに特有の岩石の組合せの発達を助長したスラブ融解を引き起こしたと考えられる.
 
Key Words : adakite, Eocene, metasomatized mantle, geochemistry, Iran, Urumieh–Dokhtar
 

5. Sedimentary history with biotic reaction in the Middle Permian shelly sequence of the Southern Kitakami Massif, Japan
Yuta Shiino, Yutaro Suzuki and Fumio Kobayashi

南部北上帯中部ペルム系の化石層について,その堆積過程と古生物の応答
椎野勇太,鈴木雄太郎,小林文夫

日本などの活動的大陸縁辺部で見られるような地殻活動は,堆積盆において様々な底質環境を生む原動力となる.そのため,生物遺骸が複数の供給過程を経て埋没した場合は,その堆積盆における見かけ上の生物多様性が高くなるため,化石生物相とその変遷を理解する上で大きな障害となる.本研究は,活動的な堆積盆であった宮城県気仙沼市上八瀬地域の中部ペルム系について,生物遺骸群の埋没過程および個生態学的特性を考慮した堆積相解析を基軸として,当時の堆積環境および後背地の時空的変遷を明らかにすることを目的とした.上八瀬地域の中部ペルム系は,下位から細尾層,上八瀬層,黒沢層に区分される.細尾層は,陸棚上部から沖浜へと変遷する堆積環境を示しており,後背地には活発なデルタシステムが想定された.一方,下部外浜から外側陸棚へと堆積環境が変遷する上八瀬層について,生物遺骸の個生態および埋没過程を復元すると,1)砂浜,2)沿岸のリーフ,3)堆積盆に近接する孤立した硬質な浅海底質,を後背地とすることが明らかになった.そのため,生息場の異なる生物,ひいては相反する温度指標種とされる生物遺骸までもが共産し,見かけ上の混合生物相が形成されていた.上位の黒沢層は,堆積環境としては細尾層下部に対応するものの,デルタシステムの影響が低く,化石生物の多様性が著しく低い点で異なる.生層序学的研究によれば,ペルム紀キャピタン期の最初期は,細尾層と上八瀬層の境界付近に対比される.上八瀬層で見出された孤立した硬質性の浅海底質は,キャピタン期初期に南部北上帯の近隣各地で形成された可能性が高く,広域に渡って見かけ上の高多様性を生み出していたと考えられる.
 
Key Words : biostratinomy, Guadalupian, Paleozoic, taphonomy, tectonics, Tethys
 

6. Detrital heavy minerals from Lower Jurassic clastic rocks in the Joetsu area, central Japan: Paleo-Mesozoic tectonics in the East Asian continental margin constrained by limited chloritoid occurrences in Japan
Hiroshi Kamikubo and Makoto Takeuchi

上越地域下部ジュラ系岩室層の砕屑性重鉱物:本邦クロリトイドの限定的産出が示すアジア東縁の中古生代テクトニクス
上久保 寛,竹内 誠

上越地域に分布する下部ジュラ系砕屑岩層である岩室層から,本邦で3例目となる砕屑性クロリトイドを発見した.この発見は,本邦においてジュラ紀砕屑岩にのみ限定的に砕屑性クロリトイドが産することを示し,ジュラ系の後背地において,これまでに指摘された活動的火成弧から開析された火成弧への変化に加えて,含クロリトイド変成岩の削剥が進行していたことを示す. ジュラ紀砕屑岩に産する砕屑性クロリトイドの供給源として,日本各地に散点して分布するペルム–三畳紀含クロリトイド変成岩類が候補と考えられ,本邦ではこれら以外に先ジュラ紀含クロリトイド変成岩は知られていない.この変成岩類は,飛騨変成岩類,宇奈月変成岩類,竜峰山変成岩類および日立変成岩類であり,共通して石炭–ペルム紀の原岩堆積年代が報告され,また日立変成岩類を除き共通してペルム–三畳紀の変成年代が推定されている.さらに,日立変成岩類の変成年代も白亜紀以前の時代がある可能性がある.一般的に多くの含クロリトイド変成岩は,その原岩がAlに富む過程に強度風化作用が関わることから,風化の発達する安定大陸から変成作用を生じる造山帯への地質環境の変化を示す.従い,本邦の含クロリトイド変成岩類は,元来一つの変成帯として形成され,東アジアに当時存在した大陸の縁辺に堆積した原岩を起源とすると考えられる.既存の古生物学および岩石学分野の研究に基づけば,このペルム–三畳紀変成帯は,中央アジア造山帯と北中国地塊との衝突境界に関連すると推定される.本邦ペルム–三畳紀砕屑岩の後背地の変化から,この大陸衝突帯に参加していた地質体の上昇・削剥の順序に起因して砕屑物供給の時間的変化が生じた事が示唆される.
 
Key Words : continental collision, deeply weathered soil, detrital chloritoid, Iwamuro Formation, Jurassic deposits, provenance
 

7. Reaction microstructures in corundum- and kyanite-bearing mafic mylonites from the Takahama Metamorphic Rocks, western Kyushu, Southwest Japan
Kazuhiro Arima, Takeshi Ikeda and Kazuhiro Miyazaki

西九州,高浜変成岩に産するコランダム,藍晶石を含む苦鉄質マイロナイトの反応組織
有馬和宏,池田 剛,宮崎一博

西九州に産する低圧高温型の長崎変成岩の一つである高浜変成岩には,高変成度のマイロナイトが産する.その中の苦鉄質岩にはマーガライト集合体がコランダム,藍晶石を包有する反応組織がみられる.これは,CaO-Al2O3-SiO2-H2O 系の以下の後退変成反応で説明される.

  3 Al2O3 + 2 Al2SiO5 + 2 Ca2Al3Si3O12 (OH) + 3 H2O = 2 Ca2Al8Si4O20(OH)4 (1).
corundum kyanite  clinozoisite       fluid    margarite

質量保存および化学ポテンシャル図の解析より,藍晶石とコランダムの中に存在する化学ポテンシャル勾配が,岩石中でのCaO, SiO2 の移動を駆動したと考えられる.
岩石のマイロナイト化の時期は,露頭や薄片の観察から最高変成作用と反応(1)の間と推定される.最高変成作用と反応(1)の温度圧力を推定することによって,マイロナイト化の温度圧力条件は,530〜640℃,1.2 GPa 以上と見積られた.この圧力は島弧下の下部地殻に相当する.
 
Key Words : margarite-forming reaction, mylonites, reaction microstructure, Takahama Metamorphic Rocks
 

8. SHRIMP dating of magmatism in the Hitachi metamorphic terrane, Abukuma Belt, Japan: Evidence for a Cambrian volcanic arciar
Michio Tagiri, Daniel J. Dunkley, Tatsuro Adachi, Yoshikuni Hiroi and C. Mark Fanning

阿武隈帯日立変成地域における火成作用のSHRIMP年代測定:カンブリア紀火山弧の存在
田切美智雄,Daniel J. Dunkley,足立達朗,廣井美邦,C. Mark Fanning

日立変成地域の変成された火山岩類及び深成岩類のSHRIMP年代値から,赤沢層,玉簾層,西堂平層は,約5億年前のカンブリア紀後期の日本最古の地層であることを示した.火成岩類の化学組成から,赤沢層と玉簾層はカンブリア紀後期の火山弧であったと結論した.他方,砂泥互層が卓越する西堂平層は,大陸棚や大陸斜面で堆積したものである.赤沢層と大雄院層の間には約1.5億年の不整合がある.ハイアタスや最近の年代値の結果から,日立カンブリア系の所属について北中国地塊や佳木斯(じゃむす)−カンカ地塊との関係を論じた.
 
Key Words : Abukuma Belt, Cambrian volcanic arc, Hitachi metamorphic terrane, North China block, SHRIMP zircon age, unconformity
 

9. Evolution of animal multicellularity stimulated by dissolved organic carbon in early Ediacaran ocean: DOXAM hypothesis
Akihiro Kano, Yoko Kunimitsu, Tetsuhiro Togo, Chiduru Takashima, Fumito Shiraishi and Wei Wang

初期エディアカラ紀の海洋での溶存有機炭素により促された動物の多細胞化:DOXAM仮説
狩野彰宏,國光陽子,東郷徹宏,高島千鶴,白石史人,王 偉

ガスキエス氷期(約580 Ma)後に開始した海洋の酸化が多細胞動物の進化を促した要因だとされているが,それ以前に少なくとも海綿動物は出現していた.動物進化の第一のステージを説明するために,本論は溶存有機炭素の蓄積と動物の多細胞化を関連づけたDOXAM仮説を提唱する.南部中国などに分布する地層の地球化学的研究によると,マリノアン氷期(655-635 Ma)直後の層状化した海洋で,膨大な溶存有機炭素が滞留したとされる.有機炭素は濾過栄養動物の食料になり,海綿・刺胞動物を頂点とした食物連鎖の基礎となった.同様の生態系と海洋構造はIODP第307次航海で掘削された現在の深海サンゴマウンドにもある.この仮説は原始的な動物門(海綿・刺胞動物)が濾過栄養であることと整合的である.濾過栄養生態系の進化は有機炭素溜りを取り除き,海洋を酸化させたかもしれない.その後,新原生代末の生物進化は左右相称動物の出現という第二のステージへと移行した.
 
Key Words : animal evolution, carbon isotope, dissolved organic carbon, Doushantuo Formation, IODP, Neoproterozoic
 

10. Bacterial symbiosis forming laminated iron-rich deposits in Okuoku-hachikurou hot spring, Akita Prefecture, Japan
Chizuru Takashima, Tomoyo Okumura, Shin Nishida, Hiroko Koike and Akihiro Kano

秋田県奧奥八九郎温泉の縞状鉄沈殿物を形成する微生物の共生関係
眦臉蘢瓠け村知世,西田伸,小池裕子,狩野彰宏

縞状鉄鉱層に類似した鉄質沈殿物は現世の温泉環境でも見られ,鉄沈殿に関わる微生物群集とプロセスを直接的に検討できる.奧奥八九郎温泉の源泉に発達する鉄沈殿物はフェリハイドライトとアラゴナイトで構成されるsub-millimeter オーダーの縞状組織を示す.走査型電子顕微鏡観察や遺伝子解析の結果は,微好気性の鉄酸化細菌がフェリハイドライトを沈殿させたことを示す.源泉は酸素を含まず,鉄酸化細菌の生息には適さないが,沈殿物中に認められるシアノバクテリアの光合成が酸素を供給していた.奧奥八九郎温泉の鉄沈殿物のシアノバクテリアと鉄酸化細菌の共生関係は,縞状組織が光合成活動の強度を反映した可能性があることを示す.本研究は鉄沈殿についての新しい微生物モデルと浅海性縞状鉄鉱層に対する新しいメカニズムを提供するかもしれない.
 
Key Words : banded iron formation, cyanobacteria, ferrihydrite, iron-oxidizing bacteria, photosynthesis