教師巡検(2012大阪)日本地質学会 第11回理科教員対象見学旅行 


「大阪の津波碑と地盤沈下対策」

 

案内者:三田村宗樹(大阪市立大学)

参加者:飯島 力・池田 碩・石井陽子・磯野 清・岡田浩二・河村教一・北村正信・小幡喜一・小尾 靖・鈴木貴子・鈴木豊久・祖開康彰・竹内靖夫・楠田 隆・都築 宏・中條健次・氷高草多・藤井豊明・古野邦雄・細谷正夫・明海智里・矢島道子・湯川正敏・若林シゲミ(以上24名,50音順)

 

【案内者報告】

9名の非会員を含む計24名(教員15名,大学3名,博物館2名,一般4名)の参加を得,うす曇りの中の実施となった.JR難波駅13時集合後,道頓堀川沿いに防潮堤,橋の付替え,工業用水道などを見学し,大阪の発展の歴史と地盤沈下経緯の説明を行った.木津川との合流部に建つ大地震両川口津波記を見学,刻まれる記述と東北地方の津波被災との類似点などを話し合い,残される災害碑文を防災教育に生かす工夫の必要性を確認した.南海電鉄汐見橋線経由で木津川防潮水門を見学,落合上渡に乗船し,デルタ地帯の都市の一端を見学した.地盤沈下対策事業の一つである地盤嵩上げ事業が大阪市大正区・港区で行われた経緯を説明すると,他地域では地盤沈下対策として地盤嵩上げ事業の実施はないとのことである.地盤嵩上げが上下水道などを始めからやり直す事業であることを説明.その状況を認識し,参加者は東北地方沿岸部での地殻変動に伴う地表面沈下対策としての地盤嵩上げの難しさを認識した.大正区を甚兵衛渡で港区に移り,予定より1時間超過し,JR弁天町駅にて17時過ぎに無事解散となった.

 

【参加者感想】

デルタ地帯に発達した大都市大阪における水と市民生活との係わりについて,主に防災の視点に立ってたどる巡検であった.道頓堀川沿いでは,過度な地下水の揚水による地盤沈下の深刻さと,それに伴う防潮堤のかさ上げ工事の歴史を知ることができた.「大地震両川口津浪碑」には,安政南海地震(1854年)のときの津波来襲の有様が記され,後世の人々が津波被害から免れるようにとの思いが込められた碑文に強く胸を打たれた.大型船が航行できるように考案されたアーチ型の木津川防潮水門の開閉の様子を今回は見学できなかったが,またの機会に是非見てみたいと思った.
本巡検で,低平地に発達した大阪の街を水害からいかに守っていくか,行政や地域住民の取り組みの一端をうかがい知ることができた.また,防災教育の大切さも再認識させられた.こと防災に関しては,「備えあれば憂いなし」とはいかず「備えあっても憂いはつきない」という思いを強く抱いた.
最後に,残暑厳しい中,丁寧にご案内いただいた三田村さんに厚く御礼申し上げます.

(茨城県立麻生高等学校 飯島 力)

写真1 大地震両川口津波記での集合写真(飯島力氏撮影) 写真2 木津川防潮水門見学風景(石井陽子氏撮影)