第16回惑星地球フォトコンテスト入選作品

 

スマホ賞:静寂が語る大地の悪戯

写真:丸山 舞(神奈川県)
撮影場所:北海道大雪山系 忠別川アイシポップ川
 

 

【撮影者より】
アイシポップ川を降っていくと水流が突然消え,静寂の美しいゴルジュが現れます.かつては轟々と流れていたのかもしれませんが,今は異様な静けさと神秘的な雰囲気が漂うのみです.ゴルジュの終わりが近づくと伏流した水が一段と冷たい湧水となって復活,そのまま空が開けて羽衣の滝へと流れ込みます.羽衣の滝は,忠別川の下刻侵食により生まれた懸崖瀑で,右岸から二見川が滝中で合流します.静と動が交錯する,隠された自然の神秘がありました.

【審査委員長講評】
弱く溶結した火砕堆積物が侵食されるとこのようなゴルジュができます.太陽光がほとんど当たらないので苔むしたグリーンの世界.シンプルな画面構成の中で登山者の位置や見上げた視線が良かった.こういう時にはスマホの広角レンズが役立ちます.

【地質解説】
大雪山は,少なくとも数十万年以上にわたって,噴出中心を変えつつ活動を続けている火山群です.約3万8千年前,大雪山の中央付近,御鉢平カルデラで巨大な噴火が少なくとも2回発生し,大雪山の周辺は噴出した膨大な火山灰や軽石(御鉢平火砕流堆積物)で埋め尽くされました.このゴルシュは,御鉢平火砕流堆積物が堆積後の冷却過程で溶結し,河川により浸食されて形成されたものです.将来はさらに侵食が進んで天人峡や層雲峡のような深く険しい谷へと姿を変えていくことでしょう.大地が姿を変えていく過程で生まれたこの美しい緑の回廊を,大切に守りながら楽しんでいきましょう.(廣瀬 亘:北海道立総合研究機構)


 

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