日本地質学会会長賞:空撮で捉えた付加体の覆瓦構造
写真:木村克己(茨城県・日本地質学会会員)
撮影場所:奈良県 紀伊山地,大台ヶ原上空からの空撮 2023年2月下旬撮影
【撮影者より・地質学的解説】
空撮は大峰山脈北部の大普賢岳(写真中央)から山上ヶ岳(写真右)にいたる険しい大峯奥駈道を捉えています.この経路は四万十帯の付加堆積岩の上位に仏像構造線を介して低角度の構造で衝上する秩父帯の付加堆積岩を縦断しています.写真中央の鋸状の稜線(標高1780mの大普賢岳)の急崖斜面には,北に緩く傾斜した濃淡の縞状構造がくっきりと認められます.黒色の帯は急崖をなし針葉樹林で覆われたチャート層,灰白色の帯は平滑な斜面で落葉広葉樹下の雪を被った砂岩層にそれぞれあたります.この縞状構造は秩父帯のチャート・砕屑岩が付加される際に形成された覆瓦状構造を表現しています.(木村克己:(公財)深田地質研究所)
【審査委員長講評】
日本アルプスなど3000m級の山々では遠方から地質構造がわかりますが,標高2000m以下の山々でもこのような地質構造が見えることは知りませんでした.作者の地質の専門的な知識と撮影時期や方向の選び方など撮影技術の賜物と感心させられます.
【補足説明・参考文献】
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大和大峯研究グループ(2005)地球科学59 巻 5 号 287-300
木村・八木(2023)深田研年報,24号,63-86