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香川県荘内半島に見られる花崗岩境界
下岡和也(愛媛大学・院生)
白亜紀の環太平洋地域では,「フレアアップ」と呼ばれる地殻中へのマグマのインプットが異常に増加する時期が存在した.フレアアップ期の火成活動は,地殻中に巨大バソリス,地上に大規模カルデラを形成し(deSilva et al. 2015, Elements),大陸地殻の成長プロセスを解明するため鍵であると考えられている.中央構造線以北から山陰地域にかけて分布する西南日本の白亜紀花崗岩もこのフレアアップイベントによって形成されたと考えられている(例えば,Takatsuka et al. 2018, Lithos).荘内半島は,香川県三豊市に属する半島で,大部分が白亜紀フレアアップ期の花崗岩を主体とする深成岩からなる.この地域は,他の白亜紀花崗岩地域と比較すると,苦鉄質岩脈や苦鉄質火成包有岩(Mafic Magmatic Enclaves: MME)を多く産する.近年の研究から,これらの苦鉄質岩類と花崗岩とは成因的に関連性があると示されている(例えば,中島 2018, 地質学雑誌). このことから,筆者は,荘内半島の深成岩によりフレアアップ期の火成作用の機序を議論できると考え研究を進めている. 今回紹介する花崗岩境界は,荘内半島先端の三崎灯台から海岸線へと降りて,東に1.2 km程度歩いた地点(北緯34度15分51.0 秒,東経133度33分59.1秒)にて観察できる.写真中では,中央部横方向に粗粒花崗岩(下)と細粒花崗岩(上)の境界が確認できる.粗粒花崗岩は塊状均質な産状であるが,細粒花崗岩はMME(黒色ツブツブ)を多量に産し,しばしば変成岩捕獲岩(画面中央シマシマ)を含む.MMEはその形態や鏡下での特徴から花崗岩質マグマとマグマの状態で共存し形成されたと考えられる.露頭産状による前後関係から,粗粒花崗岩に対して細 粒花崗岩が貫入している.このことは,単調な花崗岩形成から,苦鉄質岩を伴うドラマチックな花崗岩形成へとマグマ溜まり内の様相が変化していることを示唆する.地殻中の熱的・化学的特徴の変化が妄想できる花崗岩境界,是非お立ち寄りください!(干満表読み間違えると瀬戸内海の荒波に揉みくちゃにされます.ランチと飲み物もお忘れなく!)
2021.10.25掲載