赤崩と大井川−池田宏氏による井川ジオツアーの報告−

川村喜一郎(財団法人深田地質研究所)

 

写真1 赤崩

写真1は,「赤崩(あかくずれ)」と呼ばれる四万十帯の白亜紀の砂岩泥岩互層(写真2)に見られる斜面崩壊である.崩壊斜面は,北斜面に発達しており,地層は南傾斜である.すなわち,崩壊斜面は,受け盤である.受け盤の地層が岩盤クリープによって傾動し,崩壊が進行している.崩壊は数千年以上の長期間に渡って進行していると考えられており,現在も崩壊は進んでいる.崩れた後に赤い水がでることから,「赤崩」と呼ばれているらしい.

これらの撮影地点は,池田宏氏(財団法人深田地質研究所)の地形学習会「井川ジオツアー」で案内された場所である.この学習会は,平成21年7月4日〜5日に行われ,総勢20名の地形学,堆積学,人文地理学,海洋地質学の学生・研究者が参加した.

7月4日に静岡から安倍川を上り,井川ダム,赤石ダムからさらに上流の赤石沢川(写真3)を回り,筑波大学農林技術センターで宿泊した.夕食後,10名が自分の研究について各人15〜20分間ほど話した.翌日は大井川の河川の地形や堆積構造を観察しながら静岡まで戻ってきた.その間,蛇行の成因や発達過程,さらに,それらの過程と河川での堆積作用との因果関係などについて野外で議論を交わした(写真4).

このような有意義な会は,久しぶりだった.現地案内をしてくださった池田先生や筑波大学農林技術センターをはじめ,多くの関係者には,感謝すると共に,今後もこのような会を是非続けて頂きたいと心から願っている.

写真2 赤石沢上流域で観察された四万十帯の砂岩泥岩互層.上の砂岩と河床の間に挟まれた領域はデュープレックスのようにみえる. 写真3 赤石沢にかかる吊り橋.渡るときはちょっとどきどき 写真4 蛇行する大井川

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