2020年度 名誉会員

 

西村 祐二郎(にしむら ゆうじろう)会員(1940年2月25日生、80歳)

西村祐二郎会員は,1963年に広島大学教育学部を卒業後,同大学大学院理学研究科修士課程および博士課程に進学した.1967年に山口大学に助手として赴任し,1974年には同大学理学部助教授となり,1984年には同大学教養部教授に昇任した.その後,1996年から同大学理学部教授を務め,2003年同大学を定年退職した.この間,1971年に理学博士の学位を取得し,2003年には山口大学名誉教授を授与された.
西村会員は,三郡変成岩・弱変成古生層の変成岩岩石学・年代学・テクトニクスに関する研究を一貫して行ってきた.そのなかで,白雲母や角閃石のK-Ar年代を柴田賢氏との共同研究で行い,「三郡帯」が3つの高圧変成帯の複合(三郡―蓮華帯,周防帯,智頭帯)であることを提唱した.その後,板谷徹丸氏と共同でスレート(ブドウ石―パンペリー石相程度の弱変成岩)から再結晶白雲母を高純度に分離してK-Ar年代を測定することに成功した.
中・古生代の弱変成岩が付加体とみなされるようになった1980年代以降は,その手法を三郡―中国帯だけでなく,長崎変成岩,美濃―丹波帯や秩父帯などの付加体の変成年代の解明にも応用して,微化石による海洋プレート層序の復元と組み合わせることにより,日本列島の形成発達史を大きく書き換えた.
西村会員は,1962年に日本地質学会に入会し,1985年の第92年学術大会(山口大会)では大会実行委員会の事務局長として大会を成功裏に導いた.また,2000年から2002年まで西日本支部長として支部活動の活性化に尽力した.
地域社会においては,35年に及ぶ山口大学での教育・研究成果を生かして,山口県土地分類基本調査員,山口県文化財保護審査会委員や山口県温泉審議会委員など,国や自治体の各種委員を多数務めた.このほか,改訂を8回も経た「山口県地質図(1/20万,1/15万)」やその説明書の出版に大いに関与した.また,1990年に第一学習社から出版された「山口県の岩石図鑑」はベストセラーとなり,今後の再版を望む声は大きい.
西村会員の地球科学に関する普及活動はこれらにとどまらず,地学のガイドシリーズ「山口県の地質とそのおいたち」,日曜の地学「山口県の地質をめぐって」など多数の著書を世に送り出した.山口大学退職後も,高校の「地学機廖ぁ嵳科総合A,B」の教科書や参考書,大学の「教養の地学」,「基礎地球科学」の執筆,日本地方地質誌「中国地方」の編集・執筆を行った.

以上のように,西村祐二郎会員の地質学における学術研究,教育,普及,そして日本地質学会の運営への多大な貢献は,日本地質学会の名誉会員として相応しいものと判断し,ここに推薦する. 


 

小松 正幸(こまつ まさゆき)会員(1941年8月6日生、78歳)

小松正幸会員は,1965年に北海道大学理学部を卒業後,同大学大学院理学研究科修士課程および博士課程に進学した.1971年に新潟大学に助手として赴任し,1976年には同大学理学部助教授となり,1987年には愛媛大学理学部教授に昇任した.その後,1996年に同大学理学部長を務めた後,2003年から2009年に同大学学長に就任した.この間,1971年に理学博士の学位を取得し,2009年には愛媛大学名誉教授を授与された.
小松会員は,1965年代以降,北海道の日高変成帯に関する多数の地質学的研究成果を挙げ,従来の日高変成帯の解釈とはまったく異なる画期的な到達点を築き上げた,すなわち,1950年代以来提唱されていた地向斜造山運動にもとづく日高変成帯が,大陸性地殻と海洋性地殻の接合衝上体であることを明らかにした.これらの研究によって,日高変成帯のグラニュライト相を含む高温型変成岩類は,世界でも最も若い年代を示す構造体であることを示し,さらに下部地殻を含めた島弧および大陸性の地殻の形成に関して,画期的なモデルを提唱した.
小松会員の研究は日高変成帯にとどまらず,神居古潭帯,中部日本の飛騨帯,飛騨外縁帯,上越帯,足尾帯および領家帯,さらには西南日本の領家帯など日本列島の主要な構造帯にも及んでいる.これら構造帯に産出する蛇紋岩,オフィオライト,メランジェ,高温型変成岩および高圧型変成岩など広い分野にわたる研究対象について,多くの新事実を発見し,島弧地域における新しいテクトニクス・モデルを提唱した.
また,これらの研究を通じて,自然を観察する野外研究の面白さや重要性を学生に伝え,第一線で活躍する地質技術者ならびに研究者を多数育成した.1993年には,日高変成帯をはじめとする日本列島の高温変成帯についての研究業績により,日本地質学会賞が授与された.
小松会員は,1964年に日本地質学会に入会し,1988年から1994年に評議員を,1994年から1998年に副会長をそれぞれ務め,1998年から2002年に学会長としての重責を果たした.学会長として日本地質学会の様々な改革を行い,その後の学会法人化の基礎を築いた.また,2003年に日本学術会議第19期会員に就任し,日本の学術活動の発展に貢献した.加えて,2003年からの6年間は愛媛大学学長として国立大学法人化を機に大学改革を進め,日本を代表する地球科学分野の世界的な教育拠点となる「地球深部ダイナミクス研究センター」を設立させ,その発展に貢献したことは特筆に値する.

以上のように,小松正幸会員の地質学における学術研究,教育,普及,そして日本地質学会の運営への多大な貢献は,日本地質学会の名誉会員として相応しいものと判断し,ここに推薦する.
以上