第13回惑星地球フォトコンテスト入選作品

 

優秀賞:恐怖の石段
写真:高木 嶺(東京都)

撮影場所:パキスタン北部ゴジャール地区フセイニ村
 

 

【撮影者より】
フンザ川にかかる世界的に危険で有名なフセイニの吊り橋(長さ約200 m)を渡った先が断崖絶壁になっており,その上の段丘面を利用した羊や山羊の放牧場へと村人が大きな荷物を担いで行き来している姿を狙って撮影しました.断崖の道は薄く剥がれやすいスレートの岩板が敷石となっていますが,地震や土砂災害もある場所で崩れやすいので,恐怖の吊り橋を渡り切っても安心できない道が大変印象的でした.

【審査委員長講評】
撮影地はパキスタン最北部の7000m峰が連なるカラコルム山脈です.垂直な岩壁,積み上げられたスレートの敷板,そこを生活の道として行き来する人,それぞれの配置が絶妙です.私が行ったら足がすくんで動けなくなりそうな場所です.これからも写真を通して世界の秘境を地質学的な見地から紹介してください.

【地質的背景】
北部パキスタンはヒマラヤ山脈の延長でインドプレートの衝突により8000mを超えるカラコルム山脈が連なっております.フンザは白亜紀に日本列島のような島弧であったコヒスタン弧とアジアプレートの衝突境界に位置し,中圧型の変成帯からなります.この付近は南北に圧縮されてできた垂直に立った劈開を持つ岩石が急峻な崖を形成しています.この恐怖の石段は薄くて剥がれやすい性質を持つ粘板岩で作られています.硯やスレート葺きに使用される粘板岩は加工が簡単で積みやすいので家屋や階段の材料としてフンザ谷では頻繁に使用されています.(芳野 極:岡山大学惑星物質研究所)

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