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アイスランドの溶岩断面
星 博幸(愛知教育大)
筆者は日本学術振興会の二国間交流事業共同研究・セミナー及び国際共同研究加速基金国際共同研究強化(B)の支援を受け(いずれも代表者は山本裕二・高知大学教授),2018年から毎年アイスランドで地質調査をしている(ただし2020年と2021年はCOVID-19パンデミックにより渡航できなかった)この研究の目的は,地磁気の逆転頻度と地磁気平均強度との間に関連性があるという仮説(Aubert et al., 2010)を検証することである.この検証には質・量とも十分な古地磁気データが必要であり,筆者らは手始めにアイスランド西部のルンダールハルス(Lundarháls)地域の鮮新世玄武岩溶岩シーケンスを対象として研究に取り組んでいる.この研究で筆者は地質マッピングによる岩相層序記載と地質構造調査,及び岩石サンプリングを担 当している.ルンダールハルス地域の古地磁気研究の概要については星ほか(2019)が紹介している.写真はルンダールハルス地域のガリー(gully)に露出している溶岩シーケンスの断面である.多数のアア溶岩とパホイホイ溶岩が累重している.この写真中の溶岩は厚さ数mのものが多い.溶岩と溶岩の間に厚さ数cm〜数mの赤褐色〜黄褐色堆積物が挟まることが多いが,複数のパホイホイ溶岩(溶岩ローブ)が堆積物を欠いて連続的に重なることもある.調査セクションに認められるすべての溶岩からサンプルを採取するため,溶岩を見逃さないように慎重に調査・記載する.また,この写真には写っていないが岩脈とシルが貫入していることもあり,それらの識別も重要である.アイスランドは一般に植生が貧弱なので岩石の露出が良好である.日本のフィールドで露頭探しに苦労することの多い地質屋にとって,アイスランドはパラダイスである.ただし物価は決して安くないので,調査を計画する際には注意を要する.
アイスランド西部,ルンダールハルス地域のガリーに露出する溶岩シーケンス.
(文献) Aubert et al., 2010, Space Sci. Rev., 155, 337–370. 星ほか, 2019, 地質学会第126年大会演旨, 569.
2021.10.25掲載