オーストラリア国立大学に設置されたS/Iタイプ花崗岩ベンチ

石原舜三(産業技術総合研究所 顧問)

  Bruce ChappellおよびAllan Whiteの業績をしのんで、S/Iタイプ花崗岩を用いたベンチが国立大学校内の一隅に設けられ、そのお披露目がBruceの死後6か月に当たる2012年10月19日に行われた。筆者は除幕式に参加し(写真1)、White夫人を含む多数の参加者とその喜びを分かち合った。S/Iタイプは花崗閃緑岩質の岩石が選ばれており、肉眼的にも識別可能な興味深い性質を持っている。大学に立ち寄る機会がある人は是非ともベンチに腰をかけ、岩石を観察してほしい。(Allanには、その功績を讃え2007年に日本地質学会国際賞が贈られた。)

Iタイプ:Bruceのために選ばれたのはNSW州、Middlingbank産のTara花崗閃緑岩である。これは、所によって多くの火成起源包有物を含む中粒のIタイプであり、楕円形状に巨大なSタイプCootralantra花崗閃緑岩複合体に貫入する。ジルコン年代419±4 Ma、構成鉱物は斜長石(50%)、石英(30%)、カリ長石(〜10%)、黒雲母(〜10%)、角閃石(〜5%)。この岩石はメタアルミナス、少量の磁鉄鉱を含み酸化的。Inherited zirconは少量である。87Sr/86Sr初生値は低く(0.7063)、εNdは-3.2である。

Sタイプ:Allanのために選ばれたのは、NSW州にあるJindabyne南方のJillamatong花崗閃緑岩−トナル岩であり、不規則形状の小岩体(〜90km2)が、早期古生代のタービダイトに貫入し、それ自身はIタイプ小岩体の貫入を受ける。ジルコン年代は、南東部オーストラリアのSタイプで一般的な435±4 Ma年代を示す。Inheritedジルコンはさまざまな古い年代を示す。主成分鉱物は石英(30%)、斜長石(25%)、黒雲母(25%)、カリ長石(10%)、白雲母(5%)、菫青石(5%)。この岩石は非常に還元的でアルミナに過剰。特異な性質として石英中の針状ルチル結晶がある。Allanは、この石英にペット名Jilliを与え、特に好んだ。

 

 

 

 

(2012.11.20)