地質マンガ

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【解説】


のどかな風景です。

すべり面の水頭、傾斜、歪などが常時観測されています。

すべり面に水抜きボーリングを行い、間隙水圧を下げるといった様々な対策も施されます。

  「良い所なんだぁ」というのはさすがに言い過ぎでしょう。しかし地すべり地帯の中には、壊滅的な山崩れを起こさないものも多数あります。普段は停止していますが、春の融水や豪雨の時に地下水位が上昇し、ほんの数ミリ〜数センチだけクリープして、そして再び停止するというパターンを繰り返すものも珍しくありません。こういったタイプの地すべりは、長い年月のうちに緩やかにすべり続け、やがて安定化していきます。おかげで急峻な山地に貴重な平坦面を提供してくれます。しかも地下水位が高く、水量も豊富なため(それゆえにすべるのですが)、昔から段々畑や棚田として利用されてきました。こういった地すべり地帯は、いくつかの大きなブロックに分かれてすべることがあります。このブロックの境界では食い違いや亀裂が生じますが、それ以外では家の立て付けが悪くなることも、田んぼの水が抜けることもありません。ブロックに乗って徐々に高度が下がっていくのみです。
   とはいえ、ブロックがすべっていくのですから、長期的には道路や線路が断ち切られるといった被害が生じます。河川を堰き止めたり、高速道や新幹線を断ち切るようなことになれば、きわめて深刻な災害に発展するでしょう。そもそもこのクリープが大規模な斜面崩壊を誘発する可能性もあるかもしれません。やはり十分な地質調査と長期的な観測、それに基づいた対策が講じられなければならないのは言うまでもありません。

 

坂口有人(海洋研究開発機構)